阪大,高濃度過酸化水素を合成する光触媒樹脂を開発

大阪大学の研究グループは,太陽光照射下,水とO2を原料として非常に高いH2O2生成活性を示す,Nafion含有レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF@Nf)光触媒樹脂を開発した(ニュースリリース)。

H2O2は漂白剤や消毒剤として重要な化学物質であるほか,燃料電池発電の燃料として利用できるため,エネルギーキャリアとして注目されている。

そこで,太陽光エネルギーにより水とO2からH2O2を製造する(H2O+1/2O2→H2O2, ΔG°=+117kJmol–1)光触媒反応が注目を集めている。しかし,通常,光触媒として用いられる金属酸化物半導体では,水の酸化(2H2O→O2+4H++4e)とO2の二電子還元(O2+2H++2e→H2O2)を同時に進めることは困難だった。

研究グループは、汎用の合成高分子であるRF樹脂に着目した触媒開発を進めてきた。本来絶縁体であるRF樹脂を高温水熱法で合成するすると半導体光触媒となることを初めて見出したほか,酸性水溶液中での合成により,太陽エネルギー変換効率0.7%という高い効率でH2O2を生成することを見出した。

さらに,RF樹脂に導電性高分子(ポリチオフェン)を複合することにより,太陽エネルギー変換効率を0.9%まで向上させた。しかし,長時間の光触媒反応を行なった場合には,生成したH2O2が光触媒上で酸化(H2O2→O2+2H++2e)あるいは還元(H2O2+2H++2e→2H2O)されることにより分解されてしまうため,高濃度の溶液を製造することは困難だった。したがって,効率よくH2O2を製造しながら,分解反応を抑制するための方法論が求められていた。

研究グループは今回,汎用のイオン交換型高分子であるNafion(Nf)をRF樹脂に複合したRF@Nf樹脂を合成した。樹脂が小粒子化されることにより,光触媒活性が向上して効率よくH2O2が生成するほか,樹脂表面が疎水化されることによりH2O2の分解が抑制され,高濃度(0.06wt%,16mM)のH2O2を製造できることを見出した。

これにより,水と空気を原料として,使いたい場所で使いたい量だけH2O2溶液をオンデマンド合成する小型H2O2製造デバイスの実現が期待できる。研究グループは,今回の光触媒設計を応用して,さらに高活性なH2O2合成触媒の創製が期待できるとしている。

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