九大ら,薄膜中の発光機構解明で高効率・強発光

九州大学と北海道大学は,三価ユウロピウム(Eu(III))錯体を用いた薄膜における発光過程を1兆分の1秒の時間分解能で逐次解析することによって,その機構を詳細に解明し,薄膜内の光エネルギー移動効率100%,錯体単体と比較した発光強度400倍を達成した(ニュースリリース)。

発光性希土類金属錯体は色再現度の高い次世代型有機ELディスプレーなどの発光材料としての応用が期待されている。これまで,希土類金属自身の欠点である非常に低い光吸収能力を克服するため,光吸収能力の高い有機配位子をアンテナとして配位させ,アンテナからの光エネルギー移動を利用することで高効率・強発光を実現してきた。

しかし,希土類金属の配位構造の制御は非常に難しく,アンテナに使用できる配位子の開発は限られている。そこで,実際に有機EL素子に使われる発光層状態であるホスト-ゲスト薄膜に着目。

ホスト分子として高い光吸収能力を持つ分子を用い,さらにホスト分子間,ホスト-ゲスト分子間のエネルギー移動を高効率に起こさせることができれば,極めて効率の高いアンテナとして利用できると考えた。しかし,そのエネルギー移動機構含む発光機構の詳細は不明で,ホスト-ゲスト膜の設計法は分かっていなかった。

研究グループは,ゲスト分子として鮮やかな赤色発光を示す三価ユウロピウムEu(III)錯体:Eu(hfa)3(TPPO)2を用い,様々なホスト分子を用いたホスト-ゲスト薄膜を作製した。

その結果,ホスト分子としてトリアジン誘導体:mT2Tを用いた場合に,錯体の配位子の直接励起より約400倍強い発光を示すことを見出した。これは,高い光吸収能力を持つ数多くのホスト分子から,発光体であるゲスト分子へ非常に高い効率でエネルギー移動が起こっていることを示す。

さらに,時間分解発光分光で発光過程を,過渡吸収分光で非発光性の過渡種の時間変化を実時間観測し,ホスト分子励起後の全てのエネルギー移動経路とその時定数を逐次的に明らかにした結果,このホスト-ゲスト薄膜では,全てのエネルギー移動効率が約100%であることが明らかになった。

これに基づき,アンテナとなるホスト分子の選択指針として,①光励起一重項状態(S1)-三重項状態(T1)間変換(項間交差)効率の最大化,②ホスト分子のT1と有機配位子のT1間エネルギーマッチング,の二点が高い発光効率に必須であることを示した。

この手法は,一般的な発光性有機分子を用いた薄膜についても適応可能。研究グループは,分子レベルで明らかにした発光機構をもとに適切な材料選択を行なうことで,さらなる発光効率化が期待されるとしている。

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