茨城大ら,円偏光を発光するキラルな亜鉛錯体を開発

著者: 梅村 舞香

茨城大学,北里大学,京都府立大学,東京都立大学,筑波大学は,溶液および固体状態で円偏光を発光するキラルな亜鉛錯体の開発に成功した(ニュースリリース)。

円偏光を発光する有機ELデバイスであるCP-OLEDの開発は,通常の有機ELの発光層に円偏光発光(CPL)を示すキラルな発光材料を用いることによって行なわれている。

CP-OLEDの特性を評価する指標として,外部量子効率や輝度といった有機ELとしての指標と,電界発光時のCPLの度合いを表すg値がある。これまでのところ有機ELとしての特性と円偏光発光デバイスとしてのCPL特性の両方を満足するCP-OLEDの報告例はなく,2つの特性がともに高いデバイスの開発が課題となっている。

研究グループは,キラルな配位子として軸不斉を持つことで知られるBINOL(1,1’-bi-2-naphthol)から誘導されるシッフ塩基型配位子を合成し,酢酸亜鉛と反応させることによりキラルな亜鉛錯体R-ZnおよびS-Znを合成した。

結晶中では配位子が2分子配位した歪んだ四面体型錯体と,配位子2分子に加え溶媒分子であるメタノールが配位した歪んだ三方両錐型錯体が共存していることを明らかにした。

非対称な配位子が配位した四面体型および三方両錐型錯体では,中心金属まわりにΔとΛの光学異性が生じるが,今回の錯体ではR-体の配位子からはΔの,S-体の配位子からはΛの光学異性体のみが生成していることを確認した。結晶中には錯体分子間に多くのCH…πおよびCH…O相互作用が存在し,3次元的なネットワーク構造を取っていた。

この錯体の塩化メチレン溶液および粉末はともに黄色から黄緑色の発光を示した。発光の量子収率は,塩化メチレン溶液が12%,粉末サンプルが26%であり,凝集状態での発光が単分散の発光より強くなる凝集誘起増強発光(AIEE)を示すことを明らかにした。

このAIEE特性は,固体中では多数の分子間相互作用が存在し,分子の運動が抑制されたためであると考えられる。さらにCPLスペクトルの測定から,溶液と粉末ではCPLスペクトルの符号が反転していることを見出した。

このCPLの符号の反転は,亜鉛イオンに配位している配位子のビナフチル部位の二面角が溶液と固体で異なることによるものと考えられる。あるいは,固体中では,溶媒分子であるメタノールが配位した配位様式が異なる錯体が共存していることに起因すると考えられるという。

研究グループは,今回の成果は,凝集状態で発光強度が大きい円偏光発光材料の開発であり,円偏光を発光する有機ELデバイスの開発につながるとしている。

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