日本電信電話(NTT)は,IOWN時代のAPNを活用した次世代の映像配信に向けて,エンド・ツー・エンド光映像配信技術の基本機能を実証した(ニュースリリース)。
近年,映像,番組制作では,クラウドサービスなどによるリモートプロダクションが広く利用される一方,映像データは大容量化が進んでおり,ネットワークコストやクラウドサービスコスト,システムの消費電力についても増加が見込まれる。
NTTでは,映像処理を行なうGPUなどのリソースを光電融合デバイスでチェイニングし,光伝送ネットワークと直接接続するエンド・ツー・エンド光映像配信アーキテクチャにより,課題の解決をめざしている。
エンド・ツー・エンド光映像配信アーキテクチャは,APN上のCPU,GPU,メモリを映像処理リソースとして利用する。これらのリソースは,光電融合デバイスによって相互に光波長で接続されており,映像FDNコントローラによって,リソースの割り当てやリソース間の接続を制御する。
これらの映像処理リソースは,APN装置(APN-G)と光パスで直接接続され,映像素材の入力からプレイヤーまでの出力をエンド・ツー・エンドの光パスで結ぶ。これにより,映像データの通信やリソース間の接続を光通信化でき,従来の電気処理を介する映像配信システムと比較して,超低遅延,広帯域,低消費電力化を実現する。
さらに,映像FDNコントローラが,サービス事業者の番組編成システムなどと連携し,映像配信の要求に応じて,オンデマンドにネットワークリソースや映像処理リソースを提供する。
このアーキテクチャの基本機能の要素技術として,①ネットワーク内映像処理技術,②番組編成に応じた動的素材伝送パス切替技術がある。
①により,映像データを映像信号やファイル形式に変換せずにそのまま映像処理が可能となり,低遅延の映像編集,配信機能を実現する。②により,多地点間の映像伝送,配信を動的に制御することで,様々な映像を低遅延かつシームレスにつなぐ映像配信を実現する。
動的素材伝送パス切替技術について,NHK放送技術研究所(NHK技研)と動作実証を行なった。検証では,オンデマンドに光パスネットワークの開通,閉塞を制御することで,大容量の高精細な映像素材の伝送において,効率的なネットワークの利用ができることを確認した。
また,NHK技研の動画配信基盤技術により,映像素材に対してフレーム精度によるシームレスな番組切り替え,上乗せスーパー機能を適用した配信を実証。さらに,カメラからプレイヤーまでのエンド・ツー・エンドの配信を低遅延で実現できることを確認した。
NTTでは,ネットワーク内で実施可能な映像処理技術を組み合わせるなどの検討を進めるとしている。