発明協会は5月31日,「令和5年度全国発明表彰」の受賞者を発表した(ニュースリリース)。
表彰は,科学技術的に秀でた進歩性を有し,かつ顕著な実施効果を上げている発明等に贈る第一表彰区分と,科学技術的に秀でた進歩性を有し,かつ中小・ベンチャー企業,大学及び公設試験研究機関等の研究機関に係る発明等を対象とする第二表彰区分に分けて行なわれる。
今回光関連技術では,第二表彰区分「未来創造発明賞」を,「スマートフォンを活用した眼科診断のための近接撮影用装置の発明」において,OUI代表取締役で慶應義塾大学特任講師の清水映輔氏が受賞した。
これは,スマートフォンの照明部分とカメラに装着し,スマートフォンの光源とカメラを利用して前眼部の診断に必要なスリット光,白色拡散光,青色拡散光を作り,眼の画像を撮影することで,多岐にわたる眼科疾患の診断が可能とする製品。
小型,軽量,シンプルな構造で持ち運びしやすく,3Dプリンタを用いることで安価に製造でき,スマートフォンの形状によらず適用可能。また,スマートフォンで撮影した画像を遠隔診断に活用することができるため,日本のほか医療インフラが脆弱な開発途上国を中心に世界25か国以上で展開されているという。
同じく第二表彰区分「未来創造発明奨励賞」は,「ナノ集光X線ミラー作製のための超精密測定法の発明」において,大阪大学教授の山内和人氏,理化学研究所の石川哲也氏,高輝度光科学研究センターの大橋治彦氏,ジェイテックコーポレーションの津村尚史氏が受賞した。
集光X線をプローブとするX線顕微鏡において,キーデバイスであるX線集光ミラーの製作では,長手方向に10~数100mm領域の形状を精度±1nmで評価することが求められる。光干渉法は湾曲したミラーでは一度に計測できる領域が限られ,測定データを繋ぎ合わせる必要があるが,その際の精度劣化が課題になっていた。
この発明は,同一の傾斜ステージに被験ミラーと新たに平面ミラーを配置して同時計測し,測定領域を移動する際の被験ミラーの傾斜角を平面ミラーの姿勢変化から,その場で高精度に取得する。これによって繋ぎ合わせ角度の誤差を大きく低減し,所期精度でのミラー評価を可能にしたとしている。
また,第一表彰区分「WIPO賞」では,「一人計測を可能にしたポータブル全自動レーザー測量機の意匠」をトプコンの石井光男氏が受賞。従来の測量機の構造を見直し,一見測量機とは思えないほどのシンプルなデザインを実現し,スマートフォンやタブレットによるシンプルな操作を可能にしたことで,従来複数名で行う計測作業を1人で可能とした。
同じく第一表彰区分「発明賞」を,「X線診断の撮影手順を改善するデジタル散乱線除去法の発明」で富士フイルムの今井睦朗氏が,また「LEDドットパターン投影による圧延中鋼板の高精度形状測定技術の発明」で日本製鉄の伊勢居良仁氏,加藤朋也氏,大杉正洋氏,元住友金属工業の高橋秀之氏が受賞した。