筑波大ら,VR×視線追跡の認知症検査への有用性確認

視線追跡技術のFOVEと筑波大学は,新たに開発した視線追跡型VRヘッドセットを活用した認知機能検査技術について,その有用性が示唆されたと発表した(ニュースリリース)。

認知症予防において,MCI(軽度認知障害)段階での早期発見により15~40%程度は正常の認知機能に回復することが報告されており,健常時からの適切な予防行動の実践,あるいは認知機能の状態変化を定期的に把握することでMCI段階での早期発見に繋げていくことが重要となる。

しかし,現在の認知機能スクリーニングテストはMCI段階を評価するには十分ではないと指摘されているほか,評価に10〜20分程度時間を要し,検査時の被検者の心理的負担も大きく,検査者の検査方法に対する熟練度が求められるといった課題がある。

眼球に関する様々な情報をバイオマーカーとして精緻に捉えることでアルツハイマー型認知症や軽度認知障害を鑑別できる可能性について,脳機能と眼球情報の関連性は広く認知されている。

そうした中,研究グループは,VRヘッドセットと高精度な視線追跡技術を活用した新たな認知機能検査技術(VR-E)を開発するとともに,これについて,MCIや認知症を鑑別する精度を検証すべく,臨床試験により,従来の認知機能スクリーニング検査結果との比較を行なった。

従来の認知機能検査である「MMSE」と「MOCA-J」ならびにVR-Eを実施し,各々の測定結果を比較分析した。尚,VR-Eで測定する認知領域は記憶・判断・空間認識・計算・言語機能で,計15問の認知課題から構成されている。分析の結果,以下のことが明らかになり,この認知機能検査技術は,軽度認知障害の判別能が良好であり,簡便で有用な検査ツールであることが示唆された。

・VR-Eにより算出される評価結果について,MMSE得点とVR-E得点のPearsonの相関係数は0.704(p<0.001),MoCA-J得点とVR-E得点の相関係数は0.718(p<0.001)といずれも高い相関を示した。

・VR-EのROC分析において,CDR0と0.5を判別するAUC値は0.70±0.15,CDR0.5と1-3を判別するAUC値は0.90±0.13を示し,MMSEとMoCA-Jのそれと同様に高い値を示した。

研究グループは今後,多施設でより多くの被験者に対して試験を実施することでこの検査手法の有用性を明らかにしていく。また,この検査から得られる眼球に関する様々なバイオマーカーを活用することで,脳や眼に関する他疾患の状態評価や,生活習慣データとの連携による認知機能の維持・改善方法の研究も進めていくとしている。

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