ウシオ電機と島根大学は,Far UV-Cの眼の安全性に関しての動物実験研究を実施し,角膜輪部上皮において,222nmのFar UV-Cは上皮表層にしか到達せず,角膜上皮を構成するすべての細胞の起源である角膜輪部基底領域の幹細胞に到達しないことを確認した(ニュースリリース)。
角膜輪部の基底細胞は,角膜上皮を構成するすべての細胞の起源であるため,ターンオーバーサイクルにおいて重要な役割を果たす。この研究では,角膜輪部における紫外(UV)光の深達度を調べ,基底部に存在する幹細胞に対するFar UV-Cの安全性を検討した。
シクロブタンピリミジンダイマー(DNA損傷マーカー,以下CPD)は,UV照射によりDNAのピリミジン塩基が連続した箇所で生じるため,これをUVの組織深達度の指標とし,CPDに対する免疫染色を行なって角膜輪部における局在を観察した。
麻酔下のラットに,600mJ/cm2の207,222,235,254および311nmのピーク波長のUVを照射,また,摘出したブタの角膜に222および254nmのピーク波長のUV-Cを照射したところ,ラット角膜輪部上皮のUV浸透深度は,角膜中央部の上皮と同様に波長に依存していた。
311nm UV-Bと254nm UV-Cは上皮の基底部の細胞に到達し,235nmは上皮中間部に到達していた。しかし,207および222nmのFar UV-Cは上皮の最表層の細胞までしか到達しなかった。同様に,ブタの角膜輪部上皮においても,222nmのFar UV-Cは最表層の細胞にのみ到達したとする。
この結果は,Far UV-Cが角膜に対して安全であることを示しているが,実験は麻酔下の動物や摘出した角膜でのみ行われており,今後,さらなる検証や議論が望まれるという。
ウシオは222nm紫外線の皮膚や目の急性,慢性障害などに対する安全性の研究・確認を国内外の研究機関と進めるとともに,眼科領域分野においては,引き続き島根大学とさらなる詳細な研究を進めていく。また,病院や老人ホーム,食品工場,空港,飛行機,旅客船などでの感染対策,医療機器の展開を見据えた感染予防機器などを視野に商品化を目指すとしている。