名大ら,核融合技術を応用しランダムレーザーを開発

名古屋大学,核融合科学研究所,北海学園大学,東京大学は,プラズマを材料に照射する技術を半導体の材料加工に応用し,従来に比べて大幅に工程数を削減できる新たな加工技術を提示し,ランダムレーザーを製作した(ニュースリリース)。

ランダムレーザーは,高強度の光を広い空間に照射することが可能で,レーザーと白熱電球の特徴を兼ね備えており,セキュリティ検査などで使われるセンサーや,殺菌などの分野の次世代の発光デバイスとして期待されている。

しかし,ランダムレーザーは,不規則な凹凸構造のような無秩序(ランダム)な構造を利用しているため,レーザー光の発生に必要なエネルギーや光の波長などの性能(発光特性)を制御・予測することが困難だった。

一方,核融合発電の実現には,高温のプラズマを装置の中で長時間維持する必要があり,プラズマと装置内壁との相互作用が重要な研究課題の一つとなっている。

名古屋大学と東京大学では,プラズマを壁材料に照射する設備を独自に開発して研究を行なってきた。そこで培われたプラズマの照射技術は,プラズマ化するガスの種類や照射量を正確に制御することができる。

今回,研究グループは,このプラズマ照射設備を利用し,化合物半導体である窒化ガリウムにアルゴンプラズマを照射した。通常,平面基板にプラズマを照射すると,基板の全体が均一に浸食(エッチング)される。

今回の実験では,新たに基板の上方にモリブデンの針金を配置した。プラズマで飛ばされた少量のモリブデンが窒化ガリウム上に部分的に堆積するが,それと同時に基板がプラズマで浸食される。

このとき,堆積したモリブデンが浸食を防ぐ保護膜(マスク)として機能し,ナノメートルサイズの複雑な凹凸構造が形成され,一度のプラズマ照射のみの簡便かつ低コストな手法で,半導体の表面全体にナノメートルの凹凸構造を作製することに成功した。

この実験で得られた窒化ガリウム試料は,無秩序(ランダム)な表面構造を持っているが,その構造は,プラズマの照射条件によって変化させることができる。

そこで,試料に光エネルギーを与えてレーザー光を発生させる試験をプラズマ照射条件を様々に変えて行なった結果,紫外線(365nm)のランダムレーザー光が発生した。さらに、無秩序な凹凸構造から形状やサイズの傾向を見出すことで,これまで予測が難しかったランダム構造と発光性能の関係性を導き出すことにも成功した。

研究グループは,核融合科学と光工学という異分野の融合によるこの成果が,核融合技術の応用展開を牽引するものであり,今後,更なる発展が期待されるものだとしている。

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