立教大学の研究グループは,強い紫外線環境における地球類似惑星を想定した大気シミュレーションを用いた検討により,強い紫外線環境では原子輝線放射冷却が重要な冷却過程となることを明らかにした(ニュースリリース)。
系外惑星の発見以後,5000個以上の系外惑星が見つかっており,多くの大規模観測計画が推進・立案されるなど,活発な研究分野となっている。見つかっている系外惑星の中には地球によく似た特性を持つ可能性がある惑星(ハビタブル惑星)も報告されており,そういった惑星が地球の様な温暖環境を保持し,生命を宿しうる惑星なのかは人類にとって大きな謎の一つになる。
しかしながら,温暖環境の保持に対して重要となる惑星大気は恒星からのXUV照射によって加熱され,大気散逸が促されるため,大気そして温暖環境の保持は困難であると考えられていた。
特に太陽系の近傍に多く存在し,質量が小さく低温度星な星(低温度星)に存在する地球型惑星は将来的な観測対象として期待されているが,数10億年といった長期間にわたって強いXUV照射を出し続けることが示唆されている。そのため,地球のような温暖な環境を保持する惑星の存在は理論的には難しいと示唆されていた。
研究では,地球類似惑星を想定した大気シミュレーションを用いて,強いXUV放射によって加熱された上層大気では原子輝線放射冷却が重要な冷却過程となることを明らかにした。原子輝線放射冷却は温度が上がるほど効率的に働くため,大気の高温化が抑制される。その結果,高い熱エネルギーを持つ大気粒子が惑星重力を振り切って脱出する大気散逸が抑制されることが明らかになった。
大気で吸収されたエネルギーの大部分が大気散逸に用いられると考えられていた先行研究に比べ,この研究で推定された大気散逸率は10000分1程度となることを示した。結果として,地球大気と同量の1bar大気の散逸時間は強いXUV環境でも20億年程度と地質学的な時間スケールまで伸びうることが明らかになった。
このような強いXUV環境は初期地球や低温度星回りの系外惑星に相当し,そのような惑星でも長期的な大気の保持が可能であることが予測される。この成果は初期地球における温暖環境の保持や地球以外の温暖な環境を持つハビタブル惑星の存在可能性に対して重要な示唆となりるもので,研究グループは,今後の理論的・観測的な展開が期待されるとしている。