東工大,極低温で動作する光変調器の高速動作に成功

東京工業大学,米カリフォルニア大学サンタバーバラ校,米レイセオンBBNテクノロジーズらは,磁気光学効果を活用して,極低温環境で動作する光変調器を開発し,高速データ通信に成功した(ニュースリリース)。

量子コンピュータや超伝導マイクロプロセッサなどは絶対零度(-273.15℃)にきわめて近い極低温下でのみ動作するものも多く,非常に繊細でもあり,既存の室温システムとの接続では障害も発生してしる。

そのひとつが,量子コンピュータなどにより極低温下で計算したデータの取り出し。現状のシステムでは,コンピュータが計算した電気信号によるデータを金属配線によって取り出しているが,金属配線から熱が伝わってしまうため,信号を取り出せる速度が限られ,それがボトルネックとなっていた。

その解決策として,石英ガラス製で熱の伝導を小さく抑えながら,従来の1,000倍以上の高速伝送が期待できる光ファイバを経由したデータ信号の取り出しが期待されているが,それには量子コンピュータの電気信号を光信号に変換でき,なおかつ極低温の環境でも効率よく駆動できる光変調器が必須とされていた。

そこで研究グループは,極低温環境と室温環境との間で高速な信号のやり取りを可能とする,磁気光学効果を活用した光変調器の開発に取り組んだ。開発した光変調器は,電気信号が発生させた誘導磁界が,磁気光学ガーネットの光学特性を変化させるという「磁気光学効果」を利用した「磁気光学変調器」。

磁気光学変調器の構造は,光の通り道となるシリコン光導波路を挟む形でマイクロリング共振器と磁気光学ガーネットが接合されている。金で形成したコイルに,電気信号(電流)が流れると,マイクロリング共振器がその上にある磁気光学ガーネットと作用し,シリコン光導波路を通る光の強度が磁気光学効果によって変化させられることによって,光信号が生成される。

従来の光変調器は,コンデンサのような構造を用い,電圧によって駆動するため高い抵抗を持っており,極低温で超伝導状態となった抵抗のない電気配線とは整合性が低かった。しかし,開発した磁気光学変調器は電流で駆動するため,抵抗が低く,超伝導回路との接続性も良いという。

さらに,この光変調器は光通信でよく用いられる波長1,550nmの光で動作し,シリコンフォトニクスを使った光集積回路に搭載されているため,汎用性にも優れた構造となっている。測定では2Gb/sの信号伝送に成功した。

研究グループは今後,磁気光学ガーネットに代えて新たな材料を用いることで,極低温下でのさらなる高効率動作が可能な光変調器の開発を目指すとしている。

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