名古屋大学大,大阪大学,東北大学,奈良先端科学技術大学院大学は,東洋アルミニウムが作製する特殊なペーストをシリコン単結晶基板に印刷して熱処理を行なうことで,高品質なシリコンゲルマニウム半導体を非真空で実現することに成功した(ニュースリリース)。
超高効率太陽電池として多接合太陽電池があり,30%を超える高いエネルギー変換効率を実現することができる。しかし,化合物半導体薄膜をエピタキシャル成長するための半導体基板として用いられるゲルマニウム基板は,製造コストの50%以上を占めており,安価な材料で代替することが課題となっている。
そこで研究では,安価なシリコン基板上に,シリコンとゲルマニウムが混ざった材料であるシリコンゲルマニウム膜を,低コスト技術により作製する技術開発に取り組んだ。具体的には,東洋アルミニウムが,独自技術により製造するアルミニウムとゲルマニウムの合金を含むペーストを,シリコン基板上に印刷し,非真空下で数分程度の熱処理を行なう。
熱処理を行なうと,高温時にシリコン基板の表面とペーストが溶けることで,アルミニウムーゲルマニウムーシリコンを成分とする溶液が形成される。温度が降下する過程において,過飽和状態が形成されると,シリコンゲルマニウム膜がシリコン基板上にエピタキシャル成長する。表面に残留したペーストを化学処理によって除去することで,シリコン基板上に成長したシリコンゲルマニウム半導体の膜を得ることができる。
アルミニウムとゲルマニウムを合金化することなく別々に混ぜて作製した混合ペーストでは,昇温時のペーストの溶融が不均一に起こることによって,残留ペーストの化学処理が困難という課題もあったが,合金ペーストによりそのような課題も解決できた。
X線回折により,結晶の格子定数が連続的に変化していることが予測された。別の測定と合わせることで,シリコン基板から表面に向かい,少しずつゲルマニウムの量が増えていることがわかった。
このような組成傾斜は,結晶中の原子の乱れを少なくする効果がある。最表面でのゲルマニウム組成は約90%となっており,化合物半導体のエピタキシャル成長用基板としてゲルマニウムと同等の機能を持つことが予測されるという。
開発した製造技術は,高価なゲルマニウム基板と同等の機能を持つと考えられるシリコンゲルマニウム半導体の膜を,シリコン基板に作製できることを実証した。今後は,大面積化や化合物半導体薄膜成長などへの展開が必要だが,超研究グループは,高効率多接合太陽電池を低コスト化できる可能性を示したことに大きな意義があるとしている。