理研ら,高解像3次元X線ライトシート顕微鏡開発

理化学研究所(理研)名古屋大学,シンガポール国立大学,台湾中央研究院は,X線領域での高解像度ライトシート顕微鏡(光シート顕微鏡)の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

試料を回転させずに断層像を観察する方法として,可視光領域のライトシート顕微鏡(光シート顕微鏡)が開発されている。

ライトシート顕微鏡では,シート型の励起光(ライトシート)を試料の横から照射し,ライトシートと直交する方向に試料中の蛍光体分布を観察する顕微鏡システムを設置する。試料をライトシートに対して垂直に並進運動させることで,計算の助けなしに三次元情報を取得できる。

可視光を使った三次元イメージングには,ほかにも共焦点顕微鏡と二光子顕微鏡が開発されているが,いずれも試料の奥行き方向の解像度が面内方向の解像度よりも劣っていた。

そこで研究グループは,高解像度の三次元イメージング用のX線ライトシート顕微鏡を,大型放射光施設「SPring-8」に構築した。全反射ミラーでX線をシート状に絞ることで,シートの最小厚みが65nmであることを確認した。かつ,20倍のレンズの場合,顕微鏡の視野(600μm角)の縁でも,厚みは300nm以下だった。

また,X線により発光するシンチレーター微粒子を試料中に導入し,広視野で薄い断面の像から,試料の奥行き方向に解像度の高い三次元イメージング計測ができることを示した。

用いた全反射ミラーは,X線を極限まで小さく集光するのに適し,かつ,色収差がない。このため,光源からの非常に強いX線を単色化せずに試料に直接当てても,集光サイズ(X線ライトシートの厚み)が小さいままで,高速での三次元イメージング計測に有利。研究グループは,開発したX線領域のライトシート顕微鏡を「MAXWELL顕微鏡」と名付けた。

この顕微鏡では,X線用の微小蛍光体(サイズ10~20nmのシンチレーター)を試料内の標識として導入し,ライトシートを当てた非常に薄い断面だけで蛍光を発生させる。その蛍光体の二次元分布をX線光軸に直交する可視光用顕微鏡で観察し,試料をライトシートの厚み方向に移動させながら像を撮影することで,三次元分布を求める。

顕微鏡の解像度を調べたところ,可視光のライトシート顕微鏡(奥行き方向の解像度数百nmから1μm前後)に比べ,奥行き方向の解像度は70nm程度と圧倒的に優り,面内でも回折限界程度を達成できていることが示された。

研究グループは今後,超解像顕微鏡法を利用して10倍程度向上させることで,等方的な高解像度三次元イメージングを達成できる見込みだとしている。

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