富士経済は,電動車や再生可能エネルギーの普及により需要増加が期待されるパワー半導体の世界市場を調査し,その結果を「2022年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,シリコンパワー半導体と次世代パワー半導体(SiC,GaN,酸化ガリウム,ダイヤモンド)を対象としたパワー半導体の世界市場は,需要が落ち込んだ2020年から一転した。
巣ごもり需要の継続や白物家電を中心とした民生機器分野の回復,産業分野での設備投資の活性化,テレワークの普及や5G関連の投資継続による情報通信機器分野の好調に加えて,中国や欧州での自動車・電装分野とエネルギー分野の需要増加により,2021年は前年比20.7%増と大きく伸びたとする。年間を通して需要が増えた一方,供給が追いついておらず,パワー半導体メーカー各社は部材調達方法や製品価格の見直しなどを進めているという。
2022年も市場拡大が続くものの,部材の供給不足により,伸びは鈍化するとみている。今後も,カーボンニュートラルの実現を目標に電動自動車や再生可能エネルギーの普及が進むことで,市場は拡大し,2030年には2021年比2.6倍の5兆3,587億円を予測する。また,欧米系,日系に加え,近年中国系パワー半導体メーカーが台頭しており,最大の需要地である中国市場の拡大により,中国の比率が高まるとみている。
次世代パワー半導体は,シリコンと比較して性能面での優位性から注目が集まっている。その中でも,SiCパワー半導体が情報通信機器分野,エネルギー分野,自動車・電装分野の需要が堅調だとする。自動車・電装分野の増加に加えて,GaNパワー半導体の需要増加,酸化ガリウムパワー半導体の市場立ち上がりにより,2030年頃には1兆円突破が予測されるとしている。
一方,製造装置の世界市場は,2020年に予定されていた設備投資を延期したケースもみられたことから,2021年は中国などのアジアを中心に設備投資が活発であり,市場は前年比29.6%増となったという。積極的な設備投資に加えて,SiCウエハーの8インチ化対応へのニーズが増えていることから,2022年も市場は拡大するとみる。しかし,製造装置に使用される半導体不足や部材の調達難による納期の長期化もあり,市場は大きく伸びるものの,伸び率は前年より鈍化すると予想した。