矢野経済研究所は,国内外のXR(VR/AR/MR)及び360°動画市場を調査し,地域別世界市場,HMD(ヘッドマウントディスプレー)製品出荷状況などXR・360°動画市場の将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,HMDを使用したVR(Virtual Reality:仮想現実)は市民権を得て普及段階に入りつつある。VRはゲームや動画視聴などのコンシューマ用途に加え,コロナ禍に於いて人の移動や集団行動に制約がある現在,教育・研修分野や販売分野等で有用性が認められ,企業向けの導入が急拡大しているという。
一方,AR(Augmented Reality;拡張現実)はARスマートグラスへの関心は高いものの,ディスプレー画質・視野角やバッテリー,コスト等の問題に起因して製品化がなかなか進まない。用途としても建築・建設現場や物流等,企業向けが主体だという。
MR(Mixed Reality;複合現実)は対応する製品が少ない事に加え,コスト高なため企業向けの用途が主体となっているが,自動車メーカーで大々的に導入された事例もあるという。 現在HMD市場はVR向けが大半を占めており,2021年のXR(VR/AR/MR)・360°動画対応のHMD機器の国内出荷台数は72万台とする。
2021年のXR(VR/AR/MR)・360°動画対応のHMD国内出荷台数をカテゴリ別にみると,スタンドアローン(自己完結)型が28万5,000台,ゲームコンソールが25万2,000台を占める。2018年に発売された米Oculus(現Meta)「Oculus Go(オキュラスゴー) 」以降,HMD市場はスタンドアローン型が中心となって普及してきた。
ゲームコンソールについては,SONY「PlayStationVR」が唯一の製品であり,現行モデル「PlayStation5」に対応した「PlayStationVR2」に大きな期待が集まっているという。2021年は有力製品の新型機が導入されず,国内市場は盛り上がりに欠けたが,米国市場では「Meta Quest2」がVRゲーム,動画配信サービス利用者向けに爆発的人気となり,市場は急拡大したという。
5G(第5世代移動体通信サービス)は2022年度に入りミリ波への対応が開始され,環境面での整備が加速し始め,総務省も導入スケジュールの前倒しを表明した。一方,XRへの波及はエリアカバー率が上昇し,スマートシティの運用が本格化し始める2024年以降になると予測する。
VR向けHMDは現在有力なリードデバイス(製品)が不足しており,本格的な普及は既存製品の世代交代が予定されている2023年以降になると予測する。AR,MR向けスマートグラスについては,2022年に幾つかの新製品が市場に登場し2023年には本格的な普及が始まると見込む。
XR向けアプリケーション・コンテンツは,2021年に続いて企業の教育・研修分野,コンシューマ向けではVRゲーム,動画配信を中心に市場拡大が続き,また今後はメタバース(仮想空間)関連の動きについても注目が集まるとみる。2022年のXR(VR/AR/MR)・360°動画対応のHMD国内出荷台数は前年比微減の70万8,000台を見込み,2023年の同出荷台数は同161.3%の114万2,000台と予測している。