富士経済は,設備投資の増加により好調なFAロボット市場を調査し,その結果を「2022年版 ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望 No.1 FA ロボット市場編」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,2021年の製造業向けロボット市場は,前年比20.6%増となったとする。中国をはじめ欧州や米州で新型コロナウイルス感染症の影響により低迷していた経済が回復に向かい,スマートフォンや車載バッテリー,半導体関連製造の設備投資が増加したためアクチュエーター系や組立・搬送系、クリーン搬送系が伸びたという。
特に,クリーン搬送系は,5G関連やデータセンター,車載電装品も加わり,前年比で最大の伸びを示した。また,溶接・塗装系では,中国や欧米の完成車メーカーの設備投資が増加しているため伸びているという。
今後も,人手不足や人件費の高騰などを背景に,ロボットを活用した自動化ニーズは加速し,スマートフォンや車載バッテリー,半導体関連の設備投資増加によって,アクチュエーター系や組立・搬送系を中心に導入が進むとみる。溶接・塗装系でもEV化に伴う設備投資を受けて伸びるとし,2026年の市場は2021年比5.2%増の2兆132億円を予測する。
また,2021年の半導体・電子部品実装向けロボット市場については,中国を中心としたアジアがけん引したという。モバイル関連機器やPC・ネットワーク機器,車載電装品関連の製造現場で引き合いが多く,市場は前年比33.4%増となったとする。
今後もEV用車載電装品や5G通信に関するネットワーク機器のニーズの増加に伴う,製造ロボットの需要増加により,中国を中心としたアジアの伸びを軸に,2026年に向けて市場は引き続き拡大していくとみている。
調査では注目市場として,スカラロボット,小型垂直多関節ロボット,ヒト協調ロボット,高速モジュラーマウンターを取り上げた。
このうちスカラロボットは,自動車部品や電子部品,光学部品,食品・医薬品・化学品などの製造現場で,ハンドリングやピッキング,配膳や組立などの作業に使用される水平多関節機構の製品を対象とした。
2021年はスマートフォン関連や車載バッテリーなどの伸長を受けて,製造現場での導入が増えたことにより,市場は拡大した。特に,中国では新型コロナの影響から経済活動がいち早く回復に向かったため,需要が大幅に増えたという。
EVの普及により車載バッテリーのニーズが高まり,設備投資が続くことから,2022年以降も中国や欧州,米州で伸長すると予想する。また,日本では半導体関連や自動車関連の製造現場での採用増を中心に,伸びが期待されるという。
小型垂直多関節ロボット(可搬重量20kg以下)は,スマートフォンやタブレット,PCなどのコンシューマー機器や自動車部品の生産ラインなどを中心に,小物部品や製品の組立,搬送などに使用されているものを対象とした。
2021年は,中国や欧州,米州で伸長したという。中国では,スマートフォン関連や車載バッテリー関連などへの活発な設備投資に伴って需要が高まった。また,欧米では自動車部品や電装品,医療関連向け,日本では自動車部品や半導体関連向けの設備投資が増えたことから,市場は前年比26.4%増の1,460億円となったという。
構成部品の需給がひっ迫していることや,2021年に需要が前倒しとなったため,今後の伸びは鈍化するとみるものの,2022年以降もスマートフォン関連や5G通信,データセンター,車載バッテリー関連への設備投資の増加によって中国を中心に導入が進み,2026年の市場は2021年比2.1倍を予測する。
ヒト協調ロボットは,組立や搬送など人が作業しているスペースへの置き換えや,従来のロボット性能に加え,人に近い動作や作業内容,作業環境での利用を想定した製品を対象としている。
これまでは欧州や日本のロボットメーカーが市場をけん引してきたが,中国や韓国の新興メーカーが台頭しているという。需要地としては,欧州が先行していたが,一部欧州メーカーの中国での販売が増加していることもあり,市場の中心は中国を含むアジアにシフトしているとする。
中国では自動車関連や電子デバイス,コンシューマー機器,食品など幅広い分野で活用されている。今後も,人手不足や人件費の高騰を背景に,人の作業スペースにそのまま置き換えられる利点を活かし,需要は順調に増加するとみている。参入メーカーの増加も想定され,2026年に向けて市場拡大が予想されるという。
高速モジュラーマウンターは,プリント配線基板に電子部品(チップやLSIなど)を実装する装置の内,1時間当たりの部品実装点数が6万CPH(Chip Per Hour)以上の機能を有する高速機を対象とした。
2021年の市場は,前年比19.7%増の3,530億円となったという。巣ごもり需要によるPC・ネットワーク機器関連の好調を受けて中国を中心に伸びたほか,日本では車載電装品関連の製造現場でも需要が増えたとする。
2022年は前年の反動を受け,新規受注は横ばいになるとみるが,前年の受注残もあるため市場拡大を予想する。2023年以降も中国を中心に車載電装品関連や5G通信などネットワーク機器関連の製造現場でニーズが高まるとし,2026年の市場は2021年比55.4%増の5,485億円を予測した。