大阪大学,東京大学,九州大学,岡山大学は,木材由来のナノセルロースを用いて,電気特性と3D構造を幅広く制御できるナノ半導体の創出に成功した(ニュースリリース)。
研究グループは,木材由来,持続生産可能,かつ,環境にも優しい夢の新素材「ナノセルロース」でつくる紙「ナノペーパー」を,ガラスやプラスチックに替わる基材として応用し,優れたデバイス性能とフレキシブル性・易廃棄性・生分解性を併せ持つ環境調和型電子デバイスを創出してきた。
しかしながら,ナノセルロースは電気を通さない絶縁体であり,電子デバイスとして動作させるためには、枯渇性資源である金属や石油由来の電子材料に頼らざるを得なかった。
今回の研究では,ナノペーパーを段階的に炭化することによって,その電気特性を広範かつ系統的に制御できる半導体の創出に成功した。この「ナノペーパー半導体」の電気特性制御範囲は,電気抵抗率:1012~10-2Ωcm(絶縁体~準導体),電荷キャリアタイプ:n型(電子リッチ)or p型(正孔リッチ),キャリア移動度:0.235~2.59cm2V-1s-1を網羅する。
さらに,ナノペーパーの構造設計技術(エンボス加工・折り紙・切り紙など),および,形態保持炭化技術を併用することで,その3D構造をナノ~マイクロ~マクロに及ぶトランススケールで制御することにも成功した。
すなわち,緻密で平滑なナノ構造や高比表面積のナノ細孔構造,ハチの巣状のマイクロ細孔構造やドット状のマイクロピラー構造,マクロな折り鶴やワッフル状ドーナツ構造など,幅広く作り分けることができるという。
ナノペーパー半導体の広範な電気特性制御範囲とトランススケールの3D構造制御性は,従来の半導体材料を凌駕する特長であり,目的や用途に応じた機能と構造のカスタマイズを実現する。実際に,ウェアラブル水蒸気センシングによる飛沫モニタリングからバイオ燃料電池発電まで,幅広い用途において優れた電子デバイス性能を確認した。
この成果は,木材由来のナノセルロースに半導体としての新たな価値を生み出し,電子デバイスへの適用性を拡大させるもの。研究グループは将来,間伐材などの未利用木材を原料にしたオールナノセルロース・電子デバイス,さらには,金属や石油資源に依存しない生物資源由来の持続可能なエレクトロニクスの実現に繋がることが期待されるとしている。