電気通信大学の研究グループは,光周波数コムを用いた瞬時3次元計測手法に対して,シングルモードファイバとマルチモードファイバで構成したバンドルファイバによる2次元分光法を新たに採用することで,任意の3次元形状を瞬時,かつ高精度に計測できることを実証した(ニュースリリース)。
研究グループは,光周波数コムを用いて瞬時計測が可能なワンショット3次元形状計測手法の開発を進めてきており,これまでに,モード同期Er(エルビウム)ファイバレーザーを光源としたワンショット3次元計測手法を開発している。
この手法では参照光と干渉させて得られるスペクトル干渉を用いて色情報を検出する。1次元の回折格子で波長分解すると,測定対象物の形状に応じたスペクトル干渉縞が検出され,これを解析することによって高精度な瞬時3次元形状計測が可能になる。
しかし,回折格子で波長分解する手法では,2本の空間軸のうちの1本が波長軸として使用されてしまうため,超短パルスに含まれる3次元情報を一度に検出できないといった問題点があった。
そこで研究では,チャープパルスに加えて,新たに入射側が円形配列で出射側が線状配列となるような,端面配列の異なるバンドルファイバを用いることで,平面上の異なる点における奥行き情報の同時検出を行ない,さらにファイバの本数を増やすことで多点化を行なった。これに加えて,パルス間干渉による測定可能範囲の拡大も目指した。
光源にはモード同期ErファイバレーザーとEr添加ファイバ増幅器によって得られる光周波数コムを用いた。パルス幅は65fs,パルス列の繰り返し周波数は51MHz。出射された超短パルス列を2つに分け,片方の光路にはシングルモードファイバを挿入してパルス幅5.7psのチャープパルスとし,ビーム径を6mmに調整して測定対象に照射した。
さらにその反射光に対して,もう片方の光路を通ってきたチャープパルスと干渉させて干渉光として形状情報を凍結し,190本のシングルモードファイバと55本のマルチモードファイバからなるバンドルファイバの円形配列端面で受光した。線状配列端面から出射した光を回折格子によって波長分解した後,スペクトル干渉像をIR(赤外線)カメラで取得した。
実験により,任意の3次元形状を瞬時,かつ高精度に計測できることを実証した。実験では約3mの構造をサブマイクロメートルの不確かさで計測することに成功し,従来手法では困難であった6桁もの広いダイナミックレンジ計測に成功した。
研究グループはこの成果により,被測定物の高速3次元形状計測や単発現象のイメージングなどへの応用が期待されるとしている。