浜松ホトニクスは,THz波パルスによる透過,反射画像をリアルタイムで撮像する高速応答,高分解能の「テラヘルツイメージインテンシファイア(THz-I.I.)」を世界で初めて開発したことを発表した(ニュースリリース)。
光と電波の両方の性質を持つTHz波は,光の直進性と電波の透過性を兼ね備えており,非破壊検査をはじめとするイメージング分野への応用が期待されている。THzイメージングでは,吸収したTHz波を熱に変換し,その温度変化による電気抵抗の変化を検出する熱型検出器であるボロメータが主流だが,動作速度に限界があることからリアルタイムイメージングは困難となる。
このような中,鉄道の改札やイベント会場の入り口などでの大人数のセキュリティ検査では,静止が必要ないウォークスルー方式のボディスキャナーが求められており,同社は,リアルタイムのTHzイメージングを実現できる高速応答,高分解能の「THz-I.I.」の開発を進めてきた。
I.I.とは,夜間の星明り下での暗視用として開発された画像増強管で,真空容器や入射した光を電子に変える光電面,電子を増倍するマイクロチャネルプレート(MCP),電子を光に戻す蛍光面などで構成されている。可視光や不可視光を電子に変換し,電子を真空中で増倍することで発光現象を高速,高分解能,高感度で撮像可能なため,同社は,極微弱な不可視光を発する放電現象や高速現象を観察する用途に向け,I.I.を開発,製造,販売している。
今回,開発した「THz-I.I.」は,テラヘルツ波を電子に変換するメタマテリアルアンテナを利用した光電変換面をI.I.の入力面窓に形成するとともに,アンテナの構造設計を工夫し電子を効率的に発生させることで変換効率を高めている。この結果,テラヘルツ波を効率よく電子に変換し電子を真空中で増倍することで,高速応答,高分解能でリアルタイム非破壊イメージングが可能だという。
また,用途に応じメタマテリアルアンテナの設計を変えることで,0.01~50THzの幅広い範囲から任意の周波数帯域のテラヘルツ波を撮像する事が可能。同社は今後,実用化に向けより感度の高い「THz-I.I.」の開発を進め,1年以内のサンプル出荷開始を目指すとしている。