2026年光通信機器/デバイス市場,15.9兆億円に

富士キメラ総研は,伝送されるデータ量が増えている光通信関連機器,デバイスの世界市場を調査し,その結果を「2022 光通信関連市場総調査」にまとめた(ニュースリリース)。

それによると,ITベンダーによる活発なデータセンター投資が続いており,2021年の市場は前年比8.9%増の10兆6,372億円が見込まれる。

今後,短期的には欧州や米国でのFTTx(Fiber To The x)や敷設が進む海底ケーブル,5G通信基地局への投資増加によって市場拡大するとみる。また,中長期的にはインドやインドネシア、ベトナムなど人口の多いアジア地域や,南米などでFTTxが伸長することで,2026年の市場は2020年比62.6%増を予測した。

通信機器は,ハイパースケールデータセンター向けが伸びており,2021年の市場は前年比5.5%増の7兆950億円を見込む。今後もデータセンターでの高い需要は続くとみており,特に,光伝送装置やネットワークを中継しデータを適切な行き先に転送するL2・L3スイッチが伸長することで,2026年の市場は9兆760億円を予測した。

光コンポーネント・デバイスは,光コンポーネントが光トランシーバーの高速化に伴い伸長しているという。また<光モジュールなどの高速化による多レーン製品の増加で光アクティブデバイスの引き合いが高まっていることや,光ファイバーの伸びなどにより,2021年の市場は拡大を予想する。

今後は,ライン側光トランシーバーのうち伝送速度400G ZRが,100Gや200Gの代替としてデータセンターに導入されるほか,クライアント側光トランシーバーも伸長することなどから,2026年の市場は2020年比2.3倍を予測する。

光測定器・関連機器は,光ファイバー同士を接続する融着接続機の規模が最も大きく,新規と買い替え需要の両方が増加していることから,2021年の市場は前年比6.4%増を見込む。光波形の時間変化を測定するオシロスコープで広帯域の計測が可能な製品の研究開発や製造評価に対する需要が高まっており,今後は,新製品の開発や融着接続機の安定した伸びによって,市場は拡大していくとみている。

この調査による注目市場は以下の通り。
ライン側光トランシーバーは,幹線系やメトロ系,データセンター向け,デジタルコヒーレント技術を用いた伝送速度40G以上(40G・100G・200G・400G・600G・800G)の長距離伝送の光トランシーバーを調査対象とした。

新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークや動画配信,ゲームの需要が高まっており,伝送されるデータ量が増加している。それに伴うシステムの根幹を担う基幹ネットワークの構築や増強ニーズの高まりにより,2021年は市場拡大を予想する。

現在は200G光トランシーバーが主流であるものの,2024年以降は400Gが中心となる。また,2026年には600Gや800G光トランシーバーの投入が始まるとみる。伝送されるデータ量の増加とともに新技術導入が進展することで需要は増加し,2026年の市場は2020年比3.0倍の1,795億円になると予測する。

クライアント側光トランシーバーは,光伝送装置のインターフェース用や,スイッチ,ルーター用,伝送速度は100G以上(100G・200G・400G・800G~),伝送距離は最短100mから最長40kmのものを対象とした。

現在,100Gに加えて,大手クラウドサービスベンダーなどで400Gや800G光トランシーバーの導入が進んでおり,市場は拡大している。2022年前半には,800G光トランシーバーの規格化が行なわれるとみている。今後,200G光トランシーバーから400Gや800G光トランシーバーへ移行するとともに新規導入も進み,2026年の市場は2020年比4.4倍を予測する。

光ファイバーは石英光ファイバーを対象とし,POFやスペシャリティファイバーは対象外とした。不安定な製品価格が影響して2020年前半までは価格下落が続いており,市場は低迷していた。2021年は,テレワーク普及や巣ごもり消費に伴う前年からのネットワーク需要の高まりを受け,光ファイバーの余剰在庫整理が進んだという。

また,物流停止に伴う輸送費増加,原材料価格高騰,北南米・欧州・中国における積極的なインフラ投資継続による旺盛な需要を受け製品価格が上昇したため,2021年の市場は拡大するとみる。

今後は,物流状況の改善や原材料価格高騰の解消などにより,再び価格が下落する可能性はあるが,旺盛な需要を背景として導入が進むため,2026年の市場は2020年比81.4%増を予測している。

PAM用ICは,光トランシーバーの高速化ニーズに対応する変調方式の一つとして実用化が進むPAM4(4値パルス振幅変調)用のICを対象とした。PAM用ICは,光トランシーバー内部でNRZ信号とPAM4信号間を変換する製品で,データセンターにおいて伝送するデータの増加や高速化の需要を受け開発され,2019年に市場が立ち上がった。

PAM4技術によって2倍のデータが送信可能であるため,データセンターで導入が進んでおり,2021年の市場は大幅に拡大するとみる。今後,次世代光トランシーバーのうち伝送速度が800G以降の製品は,長距離伝送を可能とするデジタルコヒーレント技術をデータセンター内でも使用するとみており,10kmのPAM変調製品は,デジタルコヒーレント製品に代替されると予想する。しかし,10km未満の製品に関しては引き続き,PAM用ICの導入が進み,2026年の市場は2020年比8.8倍の670億円になると予測している。

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