東大,アクリル板と水で原子レベルの平坦化を実現

東京大学の研究グループは,アクリル板を用いた革新的な研磨技術を開発した(ニュースリリース)。

ミラーや,SiCやGaNの基板では原子レベルの平坦性を実現する研磨技術が求められている。

表面を平坦化するためには,使用する研磨液においてレアアースを含む金属酸化物などの微粒子やさまざまな環境に有害な薬液を用いる必要があるため,より低コストで低環境負荷な研磨技術が求められていた。

研究グループは,アクリルの微粒子によってガラスの加工ができることを発見しており,有機砥粒加工法(OAM:Organic Abrasive Machining)という高精度ミラーのための超精密加工法に発展している。

その後,アクリルの表面が水中では通常研磨で用いられているSiO2やCeO2など微粒子の表面と同様の性質になることがわかってきた。水が存在しないとアクリル微粒子ではガラスを加工することができないが,ガラスを加工できる汎用的な樹脂材料はアクリルのみであることもわかってきた。

そこで研究グループは,アクリル板と水だけでガラスの表面が研磨可能ではないかと考えた。実験ではアクリル板を下に,加工物を上にそれぞれ配置し,アクリルと加工表面を接触させ,水道水をかけながら両方を回転させた。

評価の結果,両表面において表面の平滑性が改善された。また,大幅に平坦性も改善した。加工したガラス表面は原子レベルで平坦であり,また,安定的に原子レベルで平坦なガラス表面が得られることもわかった。さらに,シリコン表面の平坦化も試みたところ,原子レベルで平坦なシリコン表面を得た。

加工表面だけでなくアクリル板も加工中に自動的に平坦化され,研磨用の定盤として最適な状態になり,その後長時間にわたって利用可能であることがわかった。実際,研究においては同じアクリル板を一年以上使用してもまったく問題なく,半永久的に利用できる可能性があるという。

今回の研磨手法は,WAPOP(WAter Polishing with Organic Polymer plate)と命名された。WAPOPのランニングコストは水道代だけで,加工後の特別な表面洗浄も不要なことから,あらゆる研磨法の中で低コストであり低環境負荷だとする。

WAPOPは研磨速度が遅いという課題があるが,アクリル定盤を工夫することで大幅に改善できる可能性があるという。研究グループは今後の更なる研究開発により,WAPOPの普及が期待されるとしている。

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