北大ら,氷の結晶成長を光学的手法で解明

北海道大学と金沢大学は,氷が水中で成長する際に,その界面で氷結晶の一分子段差が自発的に集合し,より高い段差を形成しながら成長することを発見した(ニュースリリース)。

氷が水の中で成長するメカニズムは十分に理解されておらず,その具体的なプロセスとメカニズムは謎だった。

研究グループは,特殊な軸対称偏光子を導入したレーザー共焦点顕微鏡を用いて,成長途中の氷-水界面を直接観察した。この顕微鏡の高さ方向の分解能は極めて高く,氷結晶表面の1分子(0.37nm)段差まで可視化できる。さらに氷結晶の成長途中に形成される段差の高さを計測するために,マイケルソン干渉計を併用した。また,氷の成長方向に温度勾配を掛ける観察用チャンバーを独自に作成し,氷の成長速度を十分に落とすことで,成長界面の高分解観察を実現した。

一般に,結晶の表面が原子・分子レベルで平坦(ファセット)であれば,結晶の成長はその表面で分子・原子が層状に秩序を作りながらミルフィーユ状に進行する。この場合,積み重なる一分子層の端である段差(単位ステップ)の前進が成長を支配する。

それに対し,研究グループは,水中での氷の成長界面では,この単位ステップ同士が自発的に集合・束化し,より高いステップを形成することを見出した。この現象はステップバンチング不安定性(ステップの自発的な束化現象)と呼ばれ,これまで様々な物質群と結晶成長システムで観測されてきた。しかし,融液成長,しかも水から氷においては,これまで実験的に直接確認されていなかった。

今回,この現象がステップの前進運動と氷の成長に伴う潜熱の拡散の動的な競合によって起きることを突き止めた。また,束化したステップの高さは約90nmであり,およそ200本分の単位ステップで形成されていることもわかった。

さらに,自発的なステップ列が形成された後,それらが多方向から衝突を繰り返すことで,そのステップが過渡的にらせんパターンを描き出すことも発見した。このらせんパターンを伴う結晶成長様式は一般に渦巻成長と呼ばれ,らせん転位と呼ばれる結晶格子の不整合によって生じる。

渦巻成長自体は結晶の成長過程でしばしば見られる普遍的な現象だが,結晶の成長に伴うステップ列自身が欠陥を誘起し,自ら渦巻成長を駆動する成長様式は極めてユニークだといい,その過程を初めて直接観察した。

研究グループは今回の研究で得られた知見について,半導体結晶をはじめとする高品質・高機能の結晶性材料の開発・設計の新たな指針となることが期待されるとしている。

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