東京大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰ったリターンサンプルが,リュウグウを代表する粒子であること,リュウグウ表面には平板状粒子が存在し,それらが持ち帰られたことを示した(ニュースリリース)。
リターンサンプルの分析をするにあたって,探査機がリュウグウで観察したものと回収試料とを比較し,持ち帰られた試料がリュウグウを代表するものかどうかを明らかにすることが重要となる。
今回,サンプル採取時に探査機が光学航法カメラや小型モニタカメラCAM-Hで撮影した画像や,リュウグウ上を跳ね回ったMINERVA-II1ローバーの画像を解析し,クリーンチャンバー内での回収試料の撮影画像と比較することで,回収試料の代表性を検討した。
CAM-Hの画像から,探査機が弾丸を発射して飛び出した粒子の放出角度や速度は,地上での弾丸発射実験や数値シミュレーションで予測されるものとよく合い,弾丸がリュウグウ表面で発射されたことがわかるとともに,画像中の粒子の量から5gのサンプル採取は弾丸発射によるものであることもわかった。
二回の着地後の上昇時にCAM-Hが撮影した画像には,リュウグウ表面の粒子がガス噴射で舞い上がった様子が写っている。これら67個の粒子の形状を解析したところ,凹凸のはっきりした粒子と,凹凸が少なくなめらかな粒子の二種類が存在することがわかった。
これは探査機や着陸機MASCOTがリュウグウ表面の岩石に発見したものと同様で,着地点付近の粒子はリュウグウ表面の岩石とよく似たものがあることを示唆している。また,粒子には平たく細長い粒子が複数(67粒子のうち17粒子)存在することも明らかになり,リュウグウ表面に典型的に存在する粒子であるとわかった。
このような平たい粒子形状は,光学航法カメラで着地直前に撮られた画像にも確認できる他,MINERVA-IIA1ローバーが撮影したリュウグウ表面にも岩が割れて,平たい粒子が取れそうな状態も見つかり,リュウグウ表面を代表する形状のひとつであることがわかった。
さらにはリターンサンプルにも平たく細長い粒子が含まれていることもキュレーションチャンバー内での粒子観察から判明した。二回目の着地で採取された1cmに近いサイズをもつ粒子もそのひとつだという。
研究グループは,これらの結果から「はやぶさ2」サンプラーは正常に作動し,リュウグウ表面を代表する粒子を持ち帰ることに成功したことが明らかになったとしている。