千葉工大,蛍光X線でツタンカーメン短剣製法特定

千葉工業大学の研究グループは,ポータブル蛍光X線分析装置を用いてツタンカーメンの鉄剣の非破壊・非接触での化学分析を行なった結果,鉄剣が低温鍛造により製造されたこと,エジプト国外から持ち込まれた可能性があることを明らかにした(ニュースリリース)。

古代オリエント世界で栄えたヒッタイト帝国(紀元前1200~1400年)は,鉄の製造技術を独占することで軍事的優勢を得たとされている。

それ以前には,世界にはまだ鉄の製造技術はなかったと考えられている一方,エジプトのツタンカーメン王(紀元前1361年~1352年)の墓から鉄剣が発見されたことは大きな謎であった。そこで研究グループは,ツタンカーメンの棺から発見された鉄製の短剣の調査を行なった。

この短剣は,宇宙から飛来した鉄隕石を加工して製造されたと考えられていた。2016年の調査で,鉄剣の材料が鉄隕石であることが確認されたが,その製造方法については明らかにされなかった。

研究グループは,ポータブル蛍光X線分析装置を用いて,非破壊・非接触で鉄剣の元素分布の分析を行なった。この調査で得られた鉄剣の元素の存在度及び二次元分布の解析,鉄隕石のそれらを比較することにより,鉄剣の製造方法及び起源の特定に成功した。

鉄剣の両面の組成分析から10-12%のニッケルが含まれることがわかった。さらにニッケルの二次元元素分布をしたところ,ニッケル量と鉄剣の表面の組織から,鉄剣の原材料はオクタヘドライトという種類の隕石であることが明らかとなった。

所々黒い斑点状に分布する物質は硫化鉄(FeS)であり,オクタヘドライト隕石中に一般的にみられる硫化鉄包有物由来と考えられた。表面の組織と硫化鉄包有物が保存されていることは,鉄剣が低温(950度以下)での鍛造により製造されたことを示すという。

金の柄部分の定量分析を行ったところ,少量(数wt%)のカルシウムを含んでいた。これは,柄に装飾物を接着するために使われた漆喰に由来すると考えられた。エジプトで漆喰が利用され始めたのは,ツタンカーメン王の時代の1000年以上後とされるため,鉄剣はエジプト国外で製造された可能性が示唆された。

アマルナレターという古文書には,ヒッタイト帝国の隣国からツタンカーメンの祖父に送られた品々の中に,鉄剣が含まれると記録されている。金の柄に漆喰が用いられていることは,ツタンカーメンの鉄剣が,贈答品として外国からエジプトへと持ち込まれた可能性を支持するものだとしている。

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