熊本大ら,3D映像と画像照合で崩壊した石垣を復元

熊本大学,信州大学,凸版印刷は,熊本地震で崩落した石材の元の所在を,画像照合技術を用いて特定するシステムソフトウェアを開発した(ニュースリリース)。

平成28年4月の巨大地震により熊本城は大きな被害を受け,復旧作業には10年以上の年月を要すると言われている。熊本城の石垣は文化財という性質上,崩落した石材を元の正しい位置に戻す必要があるが,石材数が膨大なため,これらの照合作業を目視で行なうことは難しい。

そこで研究では画像処理技術を用いて,これらの照合作業を支援する石垣照合システムを開発した。システムでは,崩落前後の石材の形状情報や崩落前後の位置関係を頼りに,崩落石材全体の対応付けを行なった。開発したシステムは,次の①~③の3つのパートからなる。

①崩落前石材データベースの構築
震災が起こる前の石垣の写真から,石材1つ1つの正対した画像および実寸スケールの輪郭データベースを作成した。当初,震災前の石垣写真がなく行き詰まっていたが,凸版印刷がVR熊本城のコンテンツ作成のために平成23年頃に一眼レフカメラで高精細な4万枚以上の石垣写真の撮影を行なっていたため,そこから崩落前石垣のデータベースを作成できた。

②崩落後石材の計測
石垣の崩落後,石置き場に移動させた石材をステレオカメラにより3次元で計測した。それによりミリメートル単位の実寸スケール情報が取得でき,正面から見た形状に変換することができる。

③崩落前後の石材の照合
最後に,①②で得られた両者の情報の照合を行なった。具体的には崩落前後の石材輪郭形状および位置関係を基に対応付けを行なった。また,崩落前後の石材はジグソーパズルのように1対1に対応するため,このようなパズル問題を「0-1整数計画問題」として定式化して解いた。

開発した石垣照合システムを実際の熊本城の飯田丸五階櫓の石垣に適用したところ,370個の崩落石材に対して,337個(91%)の石材の元の所在を特定することができたという。残りの特定できなかった石材は小さい石材や割れた石材だった。

このシステムの照合により,約1割の石材について事前の熊本市職員による対応付けが誤っていることが判明し,本来の正しい対応関係を示すことができた。これは,数百個におよぶ石材がどれも似たような形状をしており,1枚1枚写真を見比べながらの従来の目視作業では,決して少なくない数のヒューマンエラーが生じることを示唆している。

今回のシステムにより,短期間で実用化レベルまで至ることが示された。今回の照合結果は熊本市の石垣復旧工事の設計に採用され,これを基に着工予定だとしている。

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