NICTら,多人数裸眼3Dディスプレーシステムを開発

情報通信研究機構(NICT)は,ホログラムプリント技術(HOPTEC)を応用し,多人数が同時に3Dメガネなし(裸眼)でフォトリアルな3D表示を体験できる透明AR(Augmented Reality)ディスプレーシステムを開発した(ニュースリリース)。

HOPTECとは,NICTが開発している,計算機合成ホログラムを光学的に再生し,再生された波面をホログラム記録材料に物体光としてタイリング記録するホログラム露光技術。デジタルに設計した光学機能をホログラフィック光学素子として透明なフィルムにプリントすることができる。

HOPTECを用いて開発したのは,ホログラフィックフィルムと複数台の安価な小型プロジェクタのみの簡易な構成により,裸眼で3D表示を体験できる透明ARディスプレーシステム。

このシステムは,約30台の小型プロジェクタを用いてフルカラーの映像を投影し,対角35cm,水平視野角60度,垂直視野角10度以内で,3Dメガネを着用せずに多人数で見ることができる。また,このシステムで再生される裸眼3D映像は,ホログラフィック光学素子の波長選択性により,背景や実物と重畳した拡張現実感(Augmented Reality: AR)による表現が達成される。

ホログラフィックフィルムには,プロジェクタの投影画角を吸収し,所定の視域に対して特定の角度間隔と本数で光線数を増やして反射させる機能を持たせている。このホログラフィックフィルムに対して,水平に配列した30台以上のプロジェクタからあらかじめ飛行経路を計算した光線群を投影し,再生する3Dデータが本来放つ光線群と対応付けて再現することで,裸眼3D映像の観察が可能となる。

また,NICTと凸版印刷はこのシステムによる新しいコミュニケーションの可能性を探るべく,凸版印刷のライトステージで撮影した高精細かつ肌の質感を含んだ顔計測データをこのシステム上に再現する実証実験を行ない,自然な顔の表情を映し出すことに成功した。

両者は今後も3Dコンテンツを使用した新しいコミュニケーションの可能性を開拓すべく協力していく。NICTは,3Dコンテンツの更なる高精細化,システムの簡素化・柔軟性の向上,各種3Dデータへの対応などを進め,コミュニケーションにとどまらずそれ以外の分野へ寄与できる技術の開発を目指す。

凸版印刷は,人体に関する各種計測データを蓄積し,高セキュリティ下での管理・運用ノウハウと知見を活かし,様々な領域に適応可能なデジタルコンテンツ生成のプラットフォーム構築を目指すとしている。

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