富士キメラ総研は,汎用的に採用される透明ポリマーと,低誘電特性や摺動性など様々な特性を有するポリマーの世界市場を調査し,その結果を「2022年 透明・特殊ポリマーの現状と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,2021年の市場は,前年比11.7%増の6兆1,110億円。市場の大半が透明用途で,食品や化粧品の容器・ボトル・ふた,家電部品,建材,包装用や農業用の各種フィルムなどで使用される。そのほか,光学,低誘電,摺動,バリア用途でも採用がみられるという。
2021年から2025年にかけて1,000億円以上の市場拡大が予測される品目は,PC,透明PP,フッ素樹脂で,PCやフッ素樹脂は自動車や家電,エレクトロニクス向けが伸長するとみる。透明PPは,今後アジア圏を中心とした日用品・雑貨で需要増が期待されるとした。
また,2021年から2025年にかけて年平均成長率が10%を超えるとみられる品目は透明PI,マレイミド樹脂,熱硬化性PPE,低誘電ハイドロカーボンで,透明PIはフォルダブルスマートフォンのOLEDカバーシートで採用増を予想する。低誘電特性に優れるマレイミド樹脂,熱硬化性PPE,低誘電ハイドロカーボンは,高速・高周波・大容量通信の普及に伴う市場拡大を期待する。
注目市場として,光学関連材料では透明PIと光学レンズ用樹脂を取り上げた。このうち透明PIは,透明ポリマーの多くが120℃以下の温度領域で使用されるのに対し,300℃を超える高耐熱性を有する。
2017年以前はフィルム,ワニスともにサンプル供給が主であったが,2018年にフォルダブルスマートフォンのOLEDカバーシートとして採用され,2019年から本格的な量産が開始されたという。
フォルダブルスマートフォンの生産拡大に伴い市場は大きく拡大しているものの,競合材料であるフレキシブルガラスをカバーシートに採用するケースが増えており,今後の伸びが鈍化する可能性も指摘する。一方,現在サンプル供給のみである他用途でも本格採用に向けた動きが活発化しており,2022年以降さらなる市場の底上げにつながるとしている。
一方,光学レンズ用樹脂は,メガネレンズ以外の光学レンズに採用されるCOP・COC,特殊PC,PMMA,フルオレン系ポリエステル,特殊アクリル,PAR,TPI(熱可塑性PI)などの透明ポリマーを対象とした。
スマートフォンのカメラやセンサーなどモバイルで需要が大きく,スマートフォンの背面カメラの多眼化,顔認証システムやLiDARなどセンサーの搭載,高解像度化ニーズの高まりに伴う1台当たりのレンズ搭載枚数の急増により,市場は拡大してきたという。
2020年は,スマートフォンや自動車の生産台数の減少,ストリーミング配信や動画配信サービスの普及に伴うDVD・Blu-rayプレーヤーの販売不振などにより市場は低い伸びにとどまったとする。2021年の市場は,スマートフォン市場の回復に伴い需要が増加するものの,COP・COCの需給がひっ迫していることが影響し,前年比3.1%増にとどまるとみる。
2022年以降は,COP・COCメーカーである日本ゼオンや三井化学の新設ラインが本格稼働することで,モバイルを中心に増加するとみる。また,日本では2022年5月より新型車への後退時車両直後確認装置の搭載が義務化することが決定していることから車載カメラの需要増が期待され,市場拡大を後押しするとみている。一方,スマートフォンの背面カメラ
の多眼化が収束することで,徐々に市場の伸びは鈍化すると予想している。