東京農工大学と日本ガスコムは,植物工場を使ってこれまで生産が不可能とされた冬季のブルーベリー果実の出荷に成功した(ニュースリリース)。
ブルーベリーの収穫期間は1品種でみると3週間程度と短く,果実の成熟時期が異なる種,品種,栽培型を組み合わせても,日本では夏季の4ヶ月間が主な出荷期間となっている。そのため冬季を含めたオフシーズンは,現状,海外からの輸入に頼っている。
東京農工大学では,果樹生産のための革新的な技術を開発するため,2011年にキャンパス内に「先進植物工場研究施設」を建設。この施設は,太陽光を利用する地上1階部分の太陽光型植物工場と,人工光を利用する地下1階の人工光型植物工場による2階建構造となっている。
果樹は,春夏秋冬を体験させることによって開花,結実し,休眠するため,この施設では,「春・夏・秋・冬」それぞれの環境を再現できる部屋を設置して,ブルーベリーをモデル植物として,果樹のライフサイクルの短縮化の研究を行なってきた。
研究の結果,ブルーベリーの連続開花結実法を開発し,2012年に特許を取得した。この技術では,オフシーズンを含む通年で果実の収穫が可能になり,また通常の自然栽培に比べて4~5倍の収量になったという。
また,連続的に開花が行なわれ,結実するため,1本の木に花,未熟果,成熟果が混在するいわゆる四季なりの様相を示し,長期にわたって出荷が可能になる。そこで,おの技術を社会実装するため,日本ガスコムが2021年6月に設立した6,000m2の植物工場で,連続開花結実法を誘導する温度,日長等の制御を行なって実験を重ねた。
その結果,9月から開花が認められ,11月から果実が成熟した。品種によって大きさ,糖度は異なるものの,大粒や高糖度の果実が収穫できたことから,伊勢丹新宿店で果実が12月から販売されることとなった。
日本ガスコムの植物工場は日本で初めて果樹であるブルーベリーを通年で栽培する大型の果樹工場となる。ブルーベリー果実は,手軽に食べることができるので,年間を通じて、高品質な国産のブルーベリーを安定的に供給することで,果物の摂取量の向上への貢献が期待される。
なお,果樹工場は2021年6月に完成し,工場内に入れた苗も若いため,初年度の生産量は少ないことが予想されるという。初年度は出荷量に制限もあるため,伊勢丹新宿店に商品が陳列されていないこともあるとしている。