阪大,スマホで血栓症酵素が測定できる指示薬開発

大阪大学の研究グループは,血液凝固を進行させる酵素「トロンビン」について,採取した血液中での活性を迅速に計測できる生物発光指示薬「Thrombastor」(スロンバスター)を開発した(ニュースリリース)。

トロンビンは血液凝固の中心的役割を担う酵素であり,トロンビンの活性によって血餅(かさぶた)の基盤となるフィブリンが形成される。

通常の血液凝固は血管の損傷により開始するが,過剰なトロンビン活性により血管中でも血液凝固が進行し「血栓」が形成される場合がある。この血栓は脳梗塞,心筋梗塞,肺塞栓など血栓症と称される様々な疾患を引き起こす。

したがって,血液中トロンビン活性の計測は,血液凝固機能の検査さらには血栓症の予防にも役立つ。しかし,一般的なトロンビン活性の計測では専門の計測機を使用し,また手技上の問題から計測値が上下する場合もあるため,必ずしも簡便な方法とはいえない。

今回,研究グループは,ホタルの光などで知られる生物発光を利用して,血液中トロンビン活性を計測できる新規な生物発光指示薬Thrombastor(スロンバスター:Thrombin activity sensing indicator)を開発した。通常Thrombastorは緑色発光を示すが,トロンビンによって切断されると青色に変化する。

その発光色変化を定量することでトロンビン活性を計測することができる。またThrombastorの発光は非常に明るいため,スマートフォンカメラのような汎用カメラによって撮影が可能。

実際に血液中のトロンビン活性が計測可能かを検証するために,マウスから採取した血液を用いて,Thrombastorによる検出を試みた。マウス血液から分離した血漿にThrombastorを添加し,発光をスマートフォンカメラで撮影した。

その結果,採取してから凝固反応を止めるまでの時間に応じて,発光色が緑から青色へと変化する様子が観察されたことから,時間とともに血漿中で生成されるトロンビンによりThrombastorが切断されることが確認できたという。

Thrombastorは血中のトロンビンに効率良く反応し発光色が明瞭に変化することから,トロンビン活性を迅速に計測することができる。また,スマートフォンがあれば計測が可能なため,特別な機器を購入する必要がなく導入コストも抑えられる。

この計測技術は,誰でも知りたいときに手軽に計測できる実用的な方法であり,研究グループは,スマートフォンの普及率からも在宅医療やポイントオブケア検査の実現に不可欠なものになり得るとしている。

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