理研ら,生体深部イメージング向け強発光マウス開発

理化学研究所(理研)とオリンパス(現 エビデント)は,ホタル由来の発光遺伝子を導入し,異なる波長で非常に明るく発光する2種の新しいマウス系統を開発し,生体深部組織の発光イメージングを飛躍的に改善させた(ニュースリリース)。

これまで動物個体の発光イメージング(BLI)では,ホタルの生物発光システムである,北米産のホタル(Photinus pyralis)由来の発光酵素のルシフェラーゼ(Fluc)と,ホタル由来の発光基質のルシフェリン(D-luciferin)を反応させるという生物発光のシステムが一般的だった。

しかし,FlucとD-luciferinの酵素反応によって得られる光の強度は弱く,生体深部の観察には不十分だった。しかも哺乳類の細胞で用いると,オレンジ色の単色でしか発光しない。

そのため,世界中でより明るく光る発光システムを持つ生物種の探索,既存システムのFluc遺伝子を改変してより明るく光る人工生物発光システムを開発する研究,ならびにD-luciferinを改変して発光する色を変化させる研究が盛んに行なわれてきた。

先行研究の中で研究グループは,沖縄に生息するホタル(Pyrocoelia matsumurai)由来のルシフェラーゼ(oFluc)がD-luciferinと反応すると,従来のFlucに比べて4~10倍も明るく発光し,その発光色が黄色になることを発見した。

また,人工酵素Akalucと人工基質AkaLumine-HClを組み合わせると,発光色が深赤色になり,発光イメージングの効率が従来の発光システムと比べ100~1,000倍になる人工生物発光システムAkaBLIを開発した。

研究グループは今回,これらの最新の発光システムを利用することで,肉眼でも観察可能なほどに全身が明るく光る遺伝子改変マウス系統の作出に成功した。

開発した新しいマウス系統を用いれば,生体深部にある特定の細胞や組織を標識することも,生体外から観察することもできる。さらに,異なる色(黄色と深赤色)に発光するマウス系統を用いることで,同一個体内にある二つの標識組織を同時に検出することも可能になった。

研究グループは,今回開発された発光イメージングマウス系統は,がんや免疫反応など病的な状態にある生体システムの理解にも貢献すると考えられ,生命科学研究の広い分野で利用される非常に有用なバイオリソースになるものと期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 北大ら,短波赤外蛍光イメージングの医療用色素開発 2024年04月08日
  • 阪大ら,生体内部が見える超解像顕微法を開発 2024年04月08日
  • 東工大ら,高光安定性かつ低毒性の蛍光色素を開発 2024年03月13日
  • 阪大ら,ナノスケールで光でポリマーが動く様子観察 2024年03月07日
  • 理科大ら,光硬化樹脂の窓で脳を広範囲に顕微鏡観察 2024年03月06日
  • 京大ら,生体脳の神経伝達物質受容体への標識に成功 2024年02月02日
  • 分子研,赤外光で単一のタンパク質を観察 2024年01月10日
  • 日大ら,量子計測を用いた超高感度光断層撮影法開発 2023年12月26日