日本赤外線サーモグラフィ協会(ITA)は,新型コロナ禍において需要が急拡大しているサーモグラフィについて,発熱者のスクリーニングをより効果的に正しく活用するために,必要な基礎知識や運用方法などに関するガイドを発行した(ニュースリリース)。
赤外線サーモグラフィは,遠隔から非接触・非侵襲に体表面の温度分布を可視化表示できることから,集団の中から疾病により発熱している人をスクリーニングする目的で,これまで空港検疫における水際対策等に効果的に使用されてきた。
昨今の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により,その用途は空港検疫だけでなく,多くの人が集まる医療機関,学校,公共施設など,様々な場所での発熱者スクリーニングに拡大している。
これに伴い,発熱者スクリーニングのための多種多様な機器が数多く市場に出回るとともに,発熱者スクリーニングを必要とする使用者も,赤外線サーモグラフィによる温度測定の原理,正しい使用法,誤差要因,適用限界等に関する基礎知識を持たないまま誤った使い方をしているケースも散見され,混乱が生じかねないとの不安の声も聞かれるという。
今回ITAでは,「発熱者スクリーニングサーモグラフィの運用ガイド編集委員会」を組織し,赤外線サーモグラフィを用いた発熱者スクリーニングを正しく運用するために必要な基礎知識を,ハードウェア・ソフトウェアの両面から検討し,発熱者スクリーニングサーモグラフィの運用ガイドを編集・発行することにした。
この運用ガイドの目的は,赤外線サーモグラフィによる温度測定の原理を知ってもらい,正しい基礎知識のもとに発熱者スクリーニングを正しく運用することであり,特定の装置,体表温計測・表示の機構,あるいは測定部位を推奨または排除するものではないという。
装置の特性,測定原理,測定に及ぼす影響因子等に関する正しい知識のもとで,正しく運用すれば,より効果的な発熱者スクリーニングを行なえることを,赤外線サーモグラフィユーザーに理解してもらうことが目的だとしている。
この運用ガイドでは第1報として,発熱者スクリーニングサーモグラフィを運用するにあたり「必要」な情報を提供することを考えたという。しかしながら,これだけでは「十分」であるとは言えない面もあるといい,編集委員会メンバーは,今後も関係する省庁等とも連携しながら,継続的な取り組みを検討しており,続報の発行につながるように進めて行く予定だとしている。