大阪府立大学の研究グループは,砂や塩,サイコロのように粒子の形が等方的な有機-無機ハイブリッド(今回は金属有機構造体)結晶を,ビーカーの中で反応させるだけの簡便な手法で,基板上で配向させる技術を開発した(ニュースリリース)。
有機成分と無機成分の両方で構成される有機-無機ハイブリッド材料は,有機分子の高い機能性・柔軟性と無機物質の信頼性など,それぞれの特徴を併せ持ち,相乗的に材料全体の機能の向上が可能であることから医療,情報処理,環境など様々な分野で使われている。
これらの特性は,基板上での有機-無機ハイブリッド結晶の配向に強く依存する。結晶の機能は結晶の向きと相関があることから,最も機能を発揮できる結晶の方向を空間的に自在に制御する配向技術により,単結晶でしか出せないような機能の創出が可能となる。
研究グループは,これまで金属水酸化物の表面水酸基の規則性に着目して,金属有機構造体をエピタキシャル成長することで,大面積で金属有機構造体が配向した薄膜を達成してきた。今回,この技術をさらに発展させて,結晶内の分子の向きの微細な違いを利用することで,粒子の形状にかかわらず金属有機構造体結晶を配向させる技術を初めて開発した。
金属有機構造体は,分子サイズの孔を有しており,特定の分子を特定の孔に方位や間隔を規定して導入することが出来る。今回,金属有機構造体結晶内で結晶の骨格と導入した有機半導体分子の相互作用による電子が流れる経路(導電パス)を設計,制御する手法へと発展し,特定の方向に高い導電性を示す薄膜を実現した。
これまで報告されてきた方法で作製した薄膜では,金属有機構造体の結晶が配向していないため,薄膜の電気特性を自在に制御することはできなかった。
一方,この技術で得られる薄膜では,指定する特定の方向に電気をより多く流すことが可能となる。今回の薄膜では,最も電気を流す方向には流さない方向と比べて約10倍高い導電性を示すという。
これまで,導電性を示す金属有機構造体は次世代の超高集積デバイスに有望な材料の一つとして世界中で多くの研究が行なわれていたが,今回の成果は,大面積で空間的に自在に電気特性を設計できる初めての金属有機構造体薄膜だとする。
さらに,この技術では微結晶が配向した薄膜を得ることができるため,単結晶薄膜と比較して変形に対して格段に高い柔軟性を示す。そのため,フレキシブル半導体デバイスへの利用や,ペロブスカイト結晶の配向へ発展させることで,太陽電池の高効率化・耐久性向上などへの貢献も期待できるとしている。