新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトにおいて,浜松ホトニクスは,パルスエネルギーをLD励起では世界最高出力の250J(ジュール)とした産業用パルスレーザー装置を開発した(ニュースリリース)。
同社は6月30日(水)~7月2日(金)までパシフィコ横浜(横浜市西区)で 開催される国内最大級の光技術展示会「OPIE’21」のNEDOブース内でこの成果を公表し,併せてレーザー加工サンプルの展示なども行なう。
パルスレーザーはレーザーピーニングなどでの利用はあるものの,これまで高強度の半導体レーザー(LD)や大型のレーザー媒質がなく,高出力のレーザー装置が開発されていなかったため,最適な照射時間やエネルギーなどの加工条件を探索するシステムが確立されておらず,応用開拓が進んでいなかった。
この装置はレーザー媒質として最適化した世界最大面積のセラミックス10枚を搭載することで,光エネルギーの蓄積能力を従来の約2倍に向上させた。また,増幅器の設計も見直し,新たに開発した小型のLDモジュール8台を照射角度や位置などを工夫して搭載し,レーザー媒質を励起する効率を高めることで励起能力を従来の約2倍に向上させた。
さらに,同社の高出力レーザー技術によって装置全体の光学設計を最適化することで,集光性や照射面に対する出力分布の均一性といったビームの高品質化も実現。これらにより,従来の産業用パルスレーザー装置と同程度のサイズながらエネルギーの増幅能力を2倍以上の250Jとした,LD励起では世界最高のパルスエネルギーを出力する産業用パルスレーザー装置を実現した。
この装置を用いてレーザー技術開発の重要なマイルストーンとなる1kJ級レーザーの設計に必要な基本的な条件の評価を行なった。その結果,現在の性能を維持したままビームのサイズを4倍に拡大することで,1kJ級レーザーを実現できる可能性を確認したという。
この装置による加工データを取得・集約することで,データベースの構築やAIを用いた加工条件の最適化が可能となり,レーザー加工の効率化が進むと期待される。同社では,今後1kJ級レーザーを実現できれば,レーザー加工技術の発展に加え,医療やエネルギー,新材料,基礎科学といった新たな分野でのレーザーの応用開拓も期待されるとしている。