中央大学,東京大学,TOTOは,光触媒水分解における局所的な電荷輸送過程を可視化する技術を開発した(ニュースリリース)。
光触媒反応の性能評価は,水分解効率や光電流効率で評価され,膜全体の平均的な性能しか評価できなかった。しかし,複数材料を混合した光触媒膜による反応の不均一性等による局所的な失活を明らかにするには,反応不活性部位を特定することが不可欠となる。
これまで,光触媒における反応機構は,光で生成された電荷に由来する光電流を測定したり,励起電荷のダイナミクスを高い時間分解能で観測することで議論されてきた。しかし,これらの手法では,試料全体の平均的応答は得られるが,励起電荷に関する局所的な情報は得られず,複数の半導体微粒子の混合系であるZスキーム光触媒材料の反応機構の解明にとって致命的だった。
そこで研究では,新しい時間分解分光法である,PI-PM法を開発した。光照射された部分において,電荷応答の画像の経時変化を取得する。画像中のそれぞれの場所において,電荷の時間応答(200測定点)が含まれているので,150×100ピクセルの画像には15000個の電荷応答,すなわち,3,000,000個の数値を含むビッグデータとなる。
これらの電荷応答をクラスタリングの一つの方法であるスペクトラルクラスタリングの手法を用いて分類した。この電荷応答の特徴(応答の速さ,信号の大きさ等)を元の画像データにおいて色分けすることにより,電荷応答の特徴に応じて色分けすることに成功した。
Zスキーム型光触媒シート全体の電荷応答を測定すると,特定の視野で判別不能な複数の成分を含む応答が観測された。これをPI-PM法で解析すると,水分解の活性・不活性領域を明確に示すことができた。Zスキーム型光触媒シートのほとんどの視野では,活性領域を示すことが確認され,水分解がスムーズに進行することが示唆された。
さらに,この光触媒シートからITOを取り除くと,活性な光触媒シートの場合と異なり赤色の活性領域が減少し,緑色の不活性領域が大幅に増加することが観測され,光触媒シートへのITOの添加が,光触媒粒子間の電荷移動を促進し水分解反応を活性化することを明らかに示した。
現在,実用化に進む光触媒パネルの大きさは1m2規模になってきており,その検査・管理が急務となってきている。研究グループは今後,大面積パネルへの適用・測定/解析の自動化を進め,光触媒検査装置として5年後の実用化を目指すとしている。