東工大ら,フォトニック構造の特性が分かる顕微鏡

東京工業大学,東京インスツルメンツ,物質・材料研究機構は共同で,フォトニックバンドダイアグラム顕微鏡を開発した(ニュースリリース)。

フォトニック構造の光学特性を決定する重要な指標のひとつにフォトニックバンドダイアグラム(結晶中を伝搬する電磁波の分散関係に見られるバンド構造)がある。これを評価することで,回折限界を超えた光の閉じ込め,スローライト効果,偏光に依存した一方向性伝搬,負の屈折率など,通常の構造では見られない様々な光学現象を予想することが可能となる。

従来,フォトニックバンドダイアグラムを測定するためには,特定方向から光を入射し,それらの透過/反射特性を観測,評価を行なうことが一般的だった。この場合,それぞれのサンプル状態に適した形で光学系を組む必要があるとともに,光学系の調整を含めた測定・評価に多大な時間を要することが課題となっていた。

フォトニックバンドダイアグラムをより簡素に,かつ直接的に測定するために,研究グループではフォトニックバンドダイアグラム顕微鏡を開発した。広帯域白色光源から各種波長板や可変リターダを介した後,対物レンズによりサンプルと垂直に光を入射する。その後,サンプルから散乱してきた光のフーリエ画像を4f光学系を介して可視カメラおよび赤外カメラで観測する。

このとき,可視カメラの前には撮像レンズが配置されており,サンプルの実像を観測しながら,測定したいフォトニック構造の局所領域を指定することができるようになっている。また,赤外カメラの前には波長可変フィルタが配置されており,波長850nm-1,800nmの範囲における任意波長の回折パターンを得られる。

波長可変フィルタの中心波長を変化させながら,サンプルからの散乱光のフーリエ画像を観測し,その後,得られたフーリエ画像に対して,指定したパスに沿った強度情報を測定し,その情報を逆格子空間における特定エネルギーの強度分布に変換する。全ての波長に対して同様の動作を行ない,それらを2次元的に並べることで,フォトニックバンドダイアグラムを再構成することができる。

この装置により,様々なフォトニック構造のバンドダイアグラムを画一的に取得することに成功した。この装置は基礎研究面では,様々なフォトニック構造の特徴を明確化することができ,物性探求における多くの指標が得られる。より実用的には,各種フォトニック構造のバンドダイアグラムをあらかじめ測定しておくことで,それらを用いた光デバイスの設計が容易になる。この装置は6月上旬より「FA-CEED」の製品名にて東京インスツルメンツから販売される。

その他関連ニュース

  • 阪大ら,凍結生体の分子を高感度観察する顕微鏡開発 2024年12月12日
  • 農工大,光学顕微鏡で非接触に高分子濃度の分布測定 2024年12月12日
  • 日立ハイテクら,高分解能Laser-PEEMを半導体応用
    日立ハイテクら,高分解能Laser-PEEMを半導体応用 2024年11月12日
  • 宮崎大,光顕用パラフィン切片で電顕解析を可能に 2024年10月11日
  • 東大ら,世界最高速の蛍光寿命顕微鏡を開発 2024年09月05日
  • 新潟大,超解像顕微鏡でアクチン細胞骨格を3D撮影 2024年07月19日
  • 順天堂大ら,安価なDIY光シート顕微鏡システム開発 2024年07月02日
  • 東大ら,XFELで生体観察できる軟X線顕微鏡を開発 2024年05月24日