京大ら,孔径を制御した多孔性カーボンを開発

京都大学,東北大学,岡山大学は,焼成のみで分子レベルで細孔径が制御された多孔性カーボンを開発した(ニュースリリース)。

多孔性カーボンは耐薬品性・熱安定性・伝導性といった優れた特長を有し,軽量で細孔に様々な物質を捕まえる吸着材として応用されている。

これまでの多孔性カーボンの主な合成法は,①材料調製時のカーボン骨格の構造変化が激しく元の有機分子骨格が残らない,②オングストロームレベル(分子レベル)での細孔制御が困難,③鋳型法で鋳型を除くためにはコストとエネルギーがかかる,④同じ多孔性カーボンを得るためには高度な技術が必要,といった問題点がある。

従来の製法では,フェノール樹脂(ピッチ系)やポリアクリロニトリル(PAN系)などのポリマーが炭素源として用いられてきた。しかし,ポリマーの合成法や炭素化の過程が煩雑であり,作り手が変わると品質も異なることがしばしば起きていた。

研究では,炭素源の有機分子骨格を合理的に設計することで,不活性ガス雰囲気下で有機分子を900度で焼成するのみで細孔径が分子レベルで制御された多孔性カーボンを得ることに成功した。

具体的には,耐熱性に優れたベンゼン環部位が3次元的に配列した分子骨格に,熱重合性のアセチレン基を導入した分子1,分子2を炭素源として不活性雰囲気下で焼成することで,80%を超える高カーボン化効率で,元の分子骨格の大きさを反映した分子レベルの細孔径を有する多孔性カーボンを得ることができた。

4つのベンゼン環が3次元的に配列した分子1を焼成したカーボン1は,4.05Åの細孔径を有するが,8つのベンゼン環が3次元的に配列した分子2を焼成したカーボン2では,より大きな4.40Åの細孔径を有していた。

またカーボン1は優れた電気伝導性を示し,分子レベルの制御された細孔径を有していることから,ナトリウムイオン電池の負極材料として働くことが分かった。

細孔径の大きさ(4.05Å)がナトリウムイオンのサイズ(3.8Å)に適しており,ナトリウムイオンがカーボンの細孔を通過できる。グラファイトに比べて2倍以上の容量を示し,多孔性カーボンが分子レベルの細孔径を有することが重要であることが分かった。

この手法で得られた分子レベルの細孔径を有する多孔性カーボンは,高い伝導性を示し,分子レベルの細孔径を反映した負極電極材料への応用が示された。研究グループは,分子レベルの細孔径に応じた基質選択的な触媒などへの展開が望まれるとしている。

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