矢野経済研究所は,国内の食品向け非破壊検査装置市場を調査し,製品セグメント別の動向,参入企業動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,食品向け非破壊検査装置については,“食の安全” に対する消費者の関心と小売業者の影響力が強まるなか,食品の異物選別ニーズが高まっている。また,人手不足などを背景に,品質や生産性の向上を目的とした検査の少人化・自動化ニーズも高まっており,国内外において検査装置需要が増加しているという。
こうしたなかで市場は拡大傾向にあるが,2019年度の食品用非破壊検査装置市場(メーカー出荷金額ベース)は主力企業における需要の落ち込みと年度末の新型コロナウイルスの影響もあり,前年度比98.2%の454億円となった。
食品用非破壊検査装置におけるAI(人工知能)を構成するアルゴリズムとして最もよく知られているディープラーニング(深層学習)は,人間の脳神経回路のような多層構造のニューラルネットワークを用いて表現や学習能力を高めた機械学習の一手法とされている。
食品分野では,現在でも原材料や製品の良し悪しを人の目で判断する目視検査が多用されている。「不良品」の種類が多種多様で判断が難しい食品検査を完全自動化するには課題が多いが,判断の精度向上を目的として,各種の食品用非破壊検査装置にディープラーニングを導入する動きが活発化しているという。
現在,食品用非破壊検査装置の国内市場については,新型コロナウイルスの影響で家庭内で調理する内食の需要が高まっていることもあり概ね好調だというが,海外(輸出)市場は人やモノの移動が制約を受けていることから停滞しており,2020年度の食品用非破壊検査装置市場は僅かに減少をし,前年度比96.5%の438億円と見込んだ。
今後,コロナ禍がいつまで続くのか不透明な部分は多いが,国内での装置需要は引き続き堅調で,海外についてもビジネス目的の往来が復活すれば再び拡大基調に戻る見通しとしている。