2019年度医用画像関連市場,7.1%増567億5,300万円

矢野経済研究所は,国内の医用画像関連システム市場を調査し,セグメント別の市場動向,参入企業動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。

それによると,医用画像関連システムの中心となるRadiology PACS(Picture Archive and Communication Systems)は,2000年代初頭から医用画像のフィルムレス化が促進され,中規模(病床数200床以上)の病院を中心に本格的な導入が進んだ。

2010年代半ば以降は新規導入からリプレイスへ移行しており,その後病院のシステム投資等の抑制などで更新(リプレイス)期間が長期化し,ゆるやかなマイナス成長での推移が続いているという。

また,Radiology PACSの周辺システムに位置付けられる放射線情報システム(RIS;Radiology Information System)や検像システム等においても既に高い普及率に達していることに加え,Radiology PACSとのセットでのリプレイス提案・導入が主流となっているという。これらの周辺システムもRadiology PACSの販売動向の影響を少なからず受けることになり,同様にゆるやかなマイナス成長での推移が見られるとする。

このような中,2019年度の医用画像関連システム・機器の市場規模(事業者売上高ベース)は,前年度比7.1%増の567億5,300万円と推計した。増加要因としては,消費増税(2019年10月)前の駆け込み需要や,2020年度からの線量記録・管理の義務化を受けて対象装置の保有施設で導入が進んだことによる,線量管理システム市場の急成長などが挙げられるという。

この調査では,急速に拡大する線量管理システム市場に注目した。線量管理システムとは,各X線装置から照射されるX線量を記録・管理し,患者単位や検査単位での線量コントロールを支援するシステム。

国内では,2010年度頃より一部の大規模施設での導入があった中,2018年度診療報酬改定で線量記録・管理が明記されたことで,当該加算の取得を目指す医療施設を中心に導入が開始された。

さらに2018年6月,厚生労働省の「医療放射線の適正管理に関する検討会」において,線量の記録や医療従事者向けの研修などを,2020年4月より義務化する方針が示された。

これにより線量記録システムの導入対象が加算取得施設から大幅に拡大し,また2018年~2019年にかけて,医用画像関連システムメーカーやモダリティメーカー等多数の新規参入があったことで市場が本格的に立ち上がったとする。

線量管理システム市場は2018年度以降に急成長しており,消費増税の反動や新型コロナウイルス感染症の影響も見込まれる市場環境の中においても,2020年度も非常に高い成長率を維持する見込みとする。このシステムは今後数年をかけて,急速に導入が進む見通しだという。

将来展望としては,2020年度の医用画像関連システム・機器の市場規模は,消費増税の駆け込み需要の反動減や新型コロナウイルス感染拡大の影響などから,前年度比6.8%減の528億7,600万円と予測。2021年度の同市場は,新型コロナウイルス感染症などの不確定要素が大きいものの,2020年度の大幅減の反動などから同4.6%増の553億1,500万円と予測する。

2022年度以降は,医用画像関連システムの導入がほぼ完了している中規模(病床数200床以上)の病院ではリプレイスの長期化や導入単価の下落,200床未満の中小規模施設では導入費用を抑えたクラウドPACSの普及などにより,市場規模は横ばいから微減で推移する見通しとした。

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