市大,紫外線でフォトアクチュエーター素子を剥離

大阪市立大学の研究グループは,紫外線や可視光線を照射すると色が変化するフォトクロミック化合物からなる結晶に紫外線を照射することで,世界最速で適切な大きさの結晶(フォトアクチュエーター素子)を剥離することに成功した(ニュースリリース)。

フォトメカニカル挙動は電気配線や回路を必要とせず,非接触で遠隔でも操作が可能なため,次世代のアクチュエーターへの応用が期待されているが,挙動速度は結晶サイズに依存するため,適切なサイズの結晶を作り分けることが課題となっている。

これまでは適切なサイズの結晶を選択する必要があり,挙動を示さない大きな結晶は使用できなかった。2019年に光照射による結晶の剥離方法が世界で初めて報告されたが,剥離に数十分要する場合もあり,より速く適切な大きさに剥離する方法が求められていた。

研究グループが合成したジアリールエテン1aの結晶に紫外線を照射すると,分子構造が1aから1bへと変化し,結晶が青く着色する。着色した結晶に可視光線を照射すると元の分子構造に戻り無色となる。このようフォトクロミズムに加え,研究では結晶から小さな結晶の剥離を新たに見つけた。

紫外線を照射し,高速カメラ(白黒)を使用して撮影した。紫外線照射0.96280秒後には結晶が青く着色しているだけだが,0.96306秒後には紫外線照射面から結晶が剥離された。剥離前後は260マイクロ秒以内と,非常に高速で剥離が進行した。(高速剥離の映像

剥離した結晶の厚みはフォトメカニカル素子として適切な2~4μmであることがわかった。剥離した結晶の大きさは元の結晶サイズに比例しないが,紫外線の照射波長を変えると変化することも明らかになった。

これは照射波長によってフォトクロミック反応の結晶深さ方向への浸み込み深さが変わるため。剥離によって得られた微小結晶は光照射により1秒以内で可逆な光屈曲挙動を示すことが明らかになった。

この研究は,世界最速で適切な大きさのフォトアクチュエーター素子を製造できる新たな可能性を見いだしたもの。光照射条件を変えることによって,あらゆる屈曲挙動を自在に操れる可能性があるという。

髪の毛の1/10程度の非常に微小な結晶のため,次世代の小さな光駆動装置としての応用が期待できる。また,毛細血管の中も動き回ることができる大きさであることを生かし,小型医療機器や体内ロボットなど,応用の可能性は多岐にわたるとしている。

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