立命大,段階的に像が変化する光着色材料を開発

立命館大学の研究グループは,超分子ゲルを用いて酸素敏感な光反応を制御することにより,光照射開始に対して遅れて着色するフォトクロミック反応の開発と,それを利用した多段階的な光現像に成功した(ニュースリリース)。

光によって色を可逆的に変化させるフォトクロミック反応は,光照射開始直後から色の変化を示し,あるところで変化が収束する。そのため,複数の画像を描こうとする場合,その都度光の照射の仕方を変える必要があり,光照射条件を変えずに多段階の画像は得られなかった。

研究グループは,試料中の溶存酸素によるフォトクロミック反応の阻害と,それに伴う溶存酸素消費を組み合わせることにより,フォトクロミック反応に対して遅延時間の導入を試みた。

酸素(O2)によって阻害されるフォトクロミック反応のモデルとして,アントラキノン(AQ)の光還元に注目。AQは,はじめ酸化体であり無色だが,紫外光照射によって黄色の還元体へと変化し,酸素と反応して元の酸化体へと戻る。また空気から試料中に酸素が侵入すると安定した遅延時間が得られないため,酸素ブロックに有効でな超分子ゲルを反応媒体として用いた。

超分子ゲル中のAQに紫外光(UV)を照射すると,はじめは溶存酸素によって阻害を受け,光還元による着色は進行しない。しかし光還元を阻害した酸素は反応性の高い活性酸素へと変化し,溶媒や添加剤などと反応して消費されていくため,気相からの酸素侵入が抑制されたゲル中においては光照射を続けると次第に酸素濃度が低下していく。

そして溶存酸素濃度が十分低下したところで,はじめて光還元が進行し始める。この結果,着色までの誘導期間を示すようなフォトクロミック反応が実現した。

超分子ゲルは約45℃以上でゾル化し,空気から容易に酸素を取り込めるため,着色したゲルを加熱してゾル化させると気相から速やかに酸素が供給され,AQの還元体が酸化されて元の無色状態へ戻った。

この挙動を利用し,光を用いた多段階的な現像とそのオンデマンドな消去を行なった。まず,シャーレ上に作製したゲル試料に対し,透明,半透明,不透明と透過率の異なる部位を有したフォトマスク越しに紫外光を照射した。

現像過程では紫外光をゲル全体に照射することで,まず酸素濃度が低い部分で光還元が進行し,第一の像が出現した。その後も光照射を続けると,酸素濃度が中程度であった部分でも光還元が起こり,別の像へと変化した。

研究グループは,光照射により内容が自動的に変化していく暗号・印刷技術や,光照射時間によって機能をスイッチングする高度な光機能材料の開発に繋がる成果だとしている。

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