浜松ホトニクスは,独自の半導体レーザー(LD)技術により新たに開発した直接集光型レーザーダイオード(DDL)と,操作の自由度が高い6軸ロボットアームを組み合わせた,レーザー焼入れ向けレーザー加熱加工装置を開発した(ニュースリリース)。
表面焼入れとは,鉄鋼材料の表面を一定以上の温度に加熱した後に冷却することで材料を強化する熱処理手法で,高周波コイルで鉄鋼材料の表面を加熱する高周波焼入れが代表的な手法となっている。
一方,レーザー焼入れは,レーザーを加熱源として用いることで照射箇所のみを瞬間的に加熱できる上,冷却工程を省略できることなどの特長があり,ファイバーレーザが使われ始めている一方,取り扱いに注意を必要とする光ファイバーが不要で,装置の構成がシンプルでランニングコストも抑えられるDDLによる実用化も進められている。
開発品は,新開発のDDLと6軸ロボットアームを組み合わせたレーザー加熱加工装置。DDLとは,LDからのレーザーを集光し対象物に直接照射するレーザー光源。照射時間や照射面積などを柔軟に調整できるDDLを開発するとともに6軸ロボットアームと組み合わせることで,操作の自由度が高いレーザー加熱加工装置を新たに開発した。
新開発のDDLは,レーザーの出力条件に最適化した電源回路を一から設計することで,平均出力2.5kWのレーザーの照射時間を,連続照射から最短4ミリ秒のパルス照射まで任意に設定することができる。また,照射部の温度を1秒間に500回の頻度で計測し,レーザーの出力を自動的に調整することで,温度を安定させる。さらに,放射温度計測により,100度から2,000度までの範囲で温度を正確に非接触で計測することで,照射部の温度を高精度に調整できる。
また,照射面に対し均一な出力分布のレーザーを,縦2.5mm×横2.5mmから縦12.5mm×横62.5mmまで35通りのパターンで照射するとともに,対象物のサイズや形状に応じ,DDLから対象物への照射距離を100mmから500mmまでの範囲で調整可能できる。
この本開発品により,さまざまな形状やサイズの鉄鋼材料へレーザーを照射できることから,焼入れ分野では比較的新しい技術であるレーザー焼入れの普及が進むと同社ではみている。また,レーザーの照射条件を柔軟に調節できることから低耐熱性の材料への応用も期待できるとしている。