富士経済は,セキュリティ関連の国内市場を調査し,その結果を「2020 セキュリティ関連市場の将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,2019年は,翌年開催が予定されていた東京五輪に向けた関連施設の建設,都市再開発,企業の設備投資の拡大などにより,新築ビルや公共インフラで需要が増加し,リプレース需要も堅調だったことから,アクセスコントロール分野や監視カメラシステム分野が二桁近く伸び,市場は拡大した。
2020年は,新型コロナウイルス感染症の影響で,企業の設備投資抑制や導入計画の延期などにより,縮小するとみる。特に監視カメラシステム分野やアクセスコントロール分野が落ち込んでいるという。一方,イベント監視/通報関連機器分野や家庭向け機器/サービス分野は,定期的なサービス料金が主な収益源である法人向け機械警備サービス,ホームセキュリティサービスが中心なことから,市場は安定しているとする。
なお,感染症対策を目的とした製品やソリューションの需要が増えており,サーマルカメラによる自動体温検知と顔認証などのアクセスコントロール機器を連携させたソリューションや,非接触を可能とする空中入力システム,深紫外線LEDの空間除菌装置などが注目されているという。
今後は,リプレース需要が一巡している防災関連システム/サービス分野の伸びは小さいが,バイオメトリクスが好調なアクセスコントロール分野,ドライブレコーダーが好調な自動車分野が高い伸びを示し,2022年に市場は1兆円を突破すると予測する。
中でも監視カメラの2019年の市場は,従来型のアナログCCTVカメラのリプレース需要を獲得する高画質な同軸HDカメラがけん引することで,アナログカメラ市場の縮小に歯止めがかかり,IPカメラを含めた監視カメラ全体の需要が旺盛で前年比二桁増となったという。
2020年は,景況感の急速な悪化によりセキュリティ関連予算の削減や新設・リプレース計画の見直しなどが増え,市場は縮小する。タイプ別には,アナログカメラは,生産の絞り込みが行われたアナログCCTVカメラの減少が続き,同軸HDカメラへのシフトも飽和感が見え始めたことから,今後も縮小するとみる。
IPカメラは2020年に縮小するものの,小売店舗や商業施設,オフィスビルなど幅広い施設で採用されていることや,リプレース案件でもアナログカメラからIPカメラにシフトしていくことで,今後も市場の拡大を予想する。
また,モノ売りからコト売りへビジネスモデルの転換を図るメーカーが増加しており,画像解析/AIを活用したソリューション開発が盛んであり,近年は監視カメラに画像解析/AI機能を内蔵したAIカメラの投入が増えているという。工場などの製造現場,公共インフラで需要が高まっており,今後は,ユーザーの認知が進むと共に,AIカメラの需要は本格化すると予想する。
以上から,監視カメラの2023年市場予測は,2019年比7.2%増となる638億円を予測した。
一方,指紋,静脈,顔,虹彩などで本人認証を行なうバイオメトリクスの用途は,入退室管理やPCアクセス管理がある。顔認証は,現状普及している生体認証の中では完全な非接触での認証が可能であることから,新型コロナウイルス感染症の影響により需要が高まっているという。
入退室管理では,体温測定機能が追加できることから,感染症対策とセキュリティ性の向上が可能な認証方法として,オフィスビルに加え,店舗や自治体などあらゆる分野で需要が増加している。今後店舗では,無人店舗の本格展開により,顔認証とキャッシュレス決済システムの連携なども期待されるとする。
PCアクセス管理においては,自治体や情報セキュリティのガイドライン刷新による教育機関の採用が増えている。また,テレワークの普及などでパソコン販売が好調であり,需要が増加しているという。これにより,顔認証によるバイオメトリクスの2023年市場予測は,2019年比3倍となる86億円を予測した。
指紋認証や静脈認証からの移行が増えているが,ほかの生体認証と比較し認証精度が低いことや,コストの高さが課題であり,今後の技術開発が期待されるとしている。
市場でのウェイトが高い静脈認証は,生体認証の中でも認証精度が高く,認証速度が速いことが評価され,オフィスビルや官庁,データセンターなどの中で,高いセキュリティ性が必要とされる施設・エリアでの採用が目立っているという。認証を行なう際,基本的には非接触での認証が可能であり,認証機器本体に抗菌塗装を施すなどの取り組みも進んでいる。指紋認証からの移行が進んでおり,市場は今後拡大するとみる。
製品技術に関しては,認証精度や機能面はほぼ完成されており,今後は製品開発よりもほかの生体認証と比較し,認証精度の高さやコスト面での優位性を訴求した営業展開が進められるとみている。