東工大ら,高周波信号の量子化分配器を実現

東京工業大学と日本電信電話は,量子ホール効果を用いた一次元プラズモン回路において,高周波信号を正確な整数比で分配することができる量子化分配器を実現した(ニュースリリース)。

高度な情報化社会(超スマート社会)の実現には,高速で正確な信号伝達技術が不可欠となる。しかし,通常の電気信号(電磁波)による高周波信号は,回路の僅かな不整合による反射が発生し,高周波になるほど正確な信号伝達が難しくなる。

研究では量子ホール効果を用いた一次元プラズモン回路に着目。この回路は不整合による反射が原理的に存在せず,信号は決まった一方向に伝搬するため,高速で正確な信号伝達が可能になると期待されている。

しかし,入力信号を複数の出力に分ける分配器は,高周波回路で必須の基本回路ながら,正確な分配器を実現することは難しい。

今回の研究で実現した量子化分配器は,正確な整数比で電荷を分配することができ,その比率を切り替えできるため,高速で正確な信号伝達技術に活用することができる。例えば,高い精度で高周波信号を切り替える必要がある量子コンピュータ用制御回路等への応用が期待されるという。

研究グループでは,量子ホール効果を用いた一次元プラズモン回路やその電子物性について調べてきた。これまで,類似のY字分岐による信号分配回路の研究を行なってきたが,回路の静電容量のばらつきによって正確な整数分配比を得ることは困難だったという。

今回,プラズモン回路に顕著なトンネル現象がある場合に着目することで,正確な整数比に量子化された電荷の分配を得ることが可能になった。

今回実現した量子化分配器は,切り替え可能な整数比で電荷を分配することができるため,高速で正確な信号伝達が要求される回路に活用することができるという。この手法を発展させることで,半導体をベースとした量子コンピュータの制御手法に関する研究に繋げるとする。

正確な整数比での信号分配という量子機能性は,量子ホール効果をもたらす電子状態が特殊なトポロジカル状態にあることに起因する。この研究で見出した現象は,電荷分数化(charge fractionalization)と呼ばれ,トポロジカルな系に特有の興味深い物理現象であり,非自明な準粒子の機能性をもたらすトポロジカル量子技術への発展が期待されるとしている。

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