沖縄科学技術大学院大学(OIST)は,沖縄周辺の海に小さなマイクロプラスチックが存在することを明らかにした(ニュースリリース)。
海洋中の大きめのプラスチック片については,かなりの研究が行なわれているが,大きさが5mm未満の小さな破片については注目を浴びていない。研究グループは,今回,それらの存在や生物への影響を特定することを目的に研究を行なった。
研究グループはは沖縄県庁と連携し,2018年9月に,沖縄本島の海岸線に近い6地点でサンプルの採取を実施した。島の南側,中部付近,北側のそれぞれ2カ所ずつを訪れ,那覇では工業港や空港付近からサンプルを採取した。サンプルは,トロール網で約1kmにわたって表層水をすくい,約800リットルの水をろ過して小さな粒子を取り出して分析した。
今回,分析には光ピンセット技術と顕微ラマン技術を組み合わせた,新しい方法を用いた。光ピンセット技術は,レーザーを使用して液体中の粒子を捉え,顕微ラマン技術は,各粒子に特有の分子指紋を識別する。これにより,有機物,微量金属,ポリエチレンやポリスチレンなどのさまざまな種類のプラスチックの存在を正確に確認できる。
またこの手法は,最初にプラスチックを取り出す必要がないため,有機物の中にプラスチックが埋め込まれているかどうか,あるいは微量金属が存在するかどうかを確認したり,サンプルとして採取した海水中のプラスチック濃度を調べることができる。
その結果,すべての箇所のサンプルからプラスチックが見つかった。プラスチックが全粒子に対して占める割合は,6地点の平均で17%を占めた。最もプラスチックの割合が高かった南部の中城沖では25%を占め,島の北側よりも南側の方がプラスチックが多いことを発見した。さらに,プラスチック濃度は,特に工業化された地域よりも,人が住んでいる場所との相関性が高いことがわかった。
サンプルから見つかったプラスチックの75%以上はポリエチレン製で,壊れた釣具,ペットボトルのキャップ,家庭用品,ビニール袋,プラスチック容器,包装などに由来すると推測された。また,漁業者たちが使うポリマーで編んだ袋が,プラスチックが海に流出する経路の一例である可能性がある。
さらに,道路の粉塵に由来するプラスチックも検出された。最近の研究で,交通量が多い地域の道路から採取した粉塵サンプルから,高濃度のマイクロプラスチックが検出されており,この一部が海で見つかっている可能性もあるという。
研究グループは,この新たな手法によって,沖縄周辺のマイクロプラスチックの存在をより明確に把握することができ,それがリスク分析や政策に影響を与えることにつながる可能性があるとしている。