日亜化学工業は,同社製280nm深紫外LEDを用いた実験において新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化効果(99.99%)を確認したと発表した(ニュースリリース)。
深紫外LEDを用いた殺菌には,①波長(波長別殺菌効果では一般的に260nmの波長(殺菌効果100%)が最も有効とされる),②光出力(LEDの光出力(放射束)が強いこと)の2つが必要とされ,①波長別殺菌効果×②光出力により求められる値の高さが殺菌パワーの強さとされている。
今回の不活化実験に用いた280nm深紫外LED(280nm品)と同社が開発中の265nm深紫外LED(265nm品)との比較結果は,以下のとおりとなった。
殺菌効果:280nm品は60%,265nm品は95%であり,280nm品の殺菌効果は約0.6倍(63%)の水準。
光出力:280nm品は70mW,265nm品は35mWであり,280nm品の光出力は2倍(200%)(光出力は約2Wの電流投入時の出力)。
殺菌パワーは,280nm品が265nm品に比べ約1.3倍(127%)に高くなる。また,同社では推定寿命を280nm品が約2万時間,265nm品が約2千時間と見込んでおり,280nm品の寿命は約10倍となる。
紫外線LEDは,波長が短くなると出力,寿命等の性能が低下し,電力変換効率(WPE)が極端に低くなる特性を持っている。これが,280nm品の高い出力と長寿命につながっているという。
これらを踏まえて,同社は殺菌パワーが高くなるポイントと寿命を考慮し,280nmの波長を用いて今回の不活化実験を行なった。
結果,新型コロナウイルスに対して,30秒の紫外線照射で99.99%の不活化効果を確認した。なお,新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(経済産業省)は,除去効果について99.99%以上の感染価減少率を目安として有効性を判断している。
今回の不活化実験を行なうために試作したハンディUV照射機は,深紫外LEDを25mm間隔で12個搭載,このLEDのピーク波長Typ.280nmの放射束はTyp.70mW,電力変換効率(WPE)は3.6%と,いずれも業界最高を達成しているとしている。