豊田工業大学は,フィラメンテーション法という独自の技術によって,波長の半周期よりも短い時間幅をもった極限的に短いパルスを発生させることに成功した(ニュースリリース)。
短い時間幅をもった光のパルスを発生するレーザーによって,瞬間的に強い光が得られる。そのような光を使った様々な応用が展開されており,現在,パルスレーザーは、広い分野で利用されている。
パルス幅が短くなれば,それだけ短い時間に光を集めることができるため,瞬間的により強い光が得られることになる。その光パルスの幅がどこまで短くできるかということを考えたときに,光は波の性質をもっているので,その波長の周期よりもパルス幅を短くすることは,極めて困難といえる。
研究グループは,フィラメンテーション法という独自の技術によって,波長の半周期よりも短い時間幅をもった極限的に短いパルスを発生させることに成功した。
フィラメンテーションとは,高い強度の光が媒質を伝搬するときに,その屈折率が光強度によって変調されるため,弱い光よりも,長い距離を集光されたまま伝搬する現象。それを波長変換に利用することで,高い波長変換効率を実現することができる。
ここでは,近赤外光である波長800nmのレーザー光を窒素ガス中に集光し,2cm程度集光されたまま伝搬させ,10μmの赤外線パルスを発生させている。
フィラメンテーションによる短パルス発生法は,研究グループが2007年に発見した方法だが,今回,フィラメンテーションの最適化を行なうことによって,光の周期の半分以下である0.4周期の幅をもったサブ半サイクルパルスを発生することができたという。
このようなパルス電場は,位相が変化することで,光電場の形の対称性が明確に変わる。そのような対称性の操作も簡単に行なうことができることを示した。また,この光電場の位相が長時間安定性していることも示した。
この光源によって,光電場の対称性に敏感な現象について研究を行なうことができるという。また,この光は,波長領域が中赤外領域であり,分子の振動準位と共鳴している。そのことを使って,脳の病気の原因と考えられている物質の形成過程や分布の特徴を観測することを目指すとしている。