理化学研究所(理研)とグローバルウェーハズ・ジャパンは,機械学習を用いて,材料作製中に材料特性をリアルタイムで予測するシステムを開発した(ニュースリリース)。
従来の材料開発では,材料の作製からその特性が判明するまでに長時間を要すること,また材料全体にわたる連続的な評価(全数検査)が難しいという課題があった。
そこで研究グループは,基幹半導体材料であるシリコンの単結晶成長において,過去に作製した結晶成長データと結晶中の部分的な材料特性(酸素不純物濃度)を,機械学習の一種である「ニューラルネットワーク」を用いて関係づけることで,結晶中の酸素不純物濃度を高精度に,そして長さ方向に材料全体にわたって連続的に予測することに成功した。
具体的には,結晶成長時における結晶成長速度やルツボ回転速度などの「制御パラメータ」に,結晶直径,炉内温度などの「観測パラメータ」,カーボンヒーターやカーボンルツボなどの使用回数といった「固定パラメータ」を加えることで,それらのパラメータから結晶インゴット中の酸素不純物濃度を高精度に予測することに成功した。
さらに,機械学習による高速予測を生かして,結晶成長時におけるシリコン単結晶中の酸素不純物濃度をリアルタイムで予測するシステムを開発した。この予測システムでは,現在の結晶成長界面位置(結晶の長さ)に対応する酸素不純物濃度の予測値が得られる。得られた予測値を結晶インゴットの長さ方向に渡って連続的に表示することで,結晶インゴット中の酸素不純物濃度分布を可視化することに成功した。
今回開発したリアルタイム予測システムには三つの利点があるとする。一つ目は,実際の実験からの評価を待たずに材料特性の値が得られること。これにより,材料開発スピードの大幅な向上が可能になる。
二つ目は,特性値が連続値で得られること。これまで材料評価の多くは,材料内の全領域に渡って特性を測定することは困難だった。このシステムでは作製データから特性値を予測するため,作製データが存在している全領域で特性の予測値を得ることができる。これにより,より細やかな特性値の制御や,従来の評価では見逃されていた突発的な変動の検出が可能になる。
三つ目は,得られた作製データと材料特性の関係を用いて,特性制御を行なえること。特性値の正確な予測には観測パラメータのデータが必要だが,制御パラメータが与えるおおよその特性値の傾向を知ることで,この傾向に基づいて特性を制御することが可能になるとする。
研究グループは,このシステムは従来の課題を解決するものであり,さまざまな材料開発に応用可能だとしている。