東北大学と九州大学は,非極性面Al1-xInxN薄膜の特異なナノ構造を調べ,本来は互いに混ざり合わないAlNとInNは自己凝集することなく,窒化ガリウム(GaN)基板直上における初期のカチオン秩序配列を引き継いだ上で,原子層レベルで交互に配列する超格子を自己形成することを解明した(ニュースリリース)。
安全な飲料水がない地域や感染症の温床といえる劣悪な衛生環境下に現在も26億人が暮らしており,浄水・医療目的の殺菌・ウイルス不活化・バイオ化学検出等が可能な深紫外線を発する省エネルギー小型固体光源の実現が切望されている。
Al1-xInxNは禁制帯幅波長が赤外線から深紫外線に渡るため発光層として魅力的な半導体材料となっている。しかし,AlNとInNは熱力学的に混ざりにくく最適な結晶成長温度が1200°C以上も異なるため,欠陥が少ない結晶を成長させることが本質的に困難であり,発光層への応用は実現されてこなかった。
2016年に東北大学は,Al1-xInxN混晶を非極性面に有機金属気相エピタキシャル(MOVPE)成長させた薄膜ナノ構造が蛍光表示管に搭載され,波長210nmに迫る深紫外線から緑色までの小型偏光光源を実現した。
その光源に用いたAl1-xInxN薄膜には櫛状に空隙が存在し多量の欠陥を含むものの,室温において深紫外から緑色まで面内直線偏光光を呈するなど非極性面Al1-xInxNに特有な物性を示した。
この要因となるAl1-xInxNの特異なナノ構造およびその発生メカニズムを明らかにすることは,Al1-xInxN混晶を用いる発光素子の更なる高効率化・多機能化に繋がるとともに,他の混晶半導体を用いた新奇デバイス設計にも貢献できるとが期待されるという。
今回研究グループは,非極性面Al1-xInxN薄膜の特異なナノ構造を,走査型透過電子顕微鏡,量子化学計算,空間分解カソードルミネッセンス 等を用いて調べた。本来は互いに混ざり合わないAlNとInNは自己凝集することなく,窒化ガリウム(GaN)基板直上における初期のカチオン秩序配列を引き継いだ上で,原子層レベルで交互に配列する超格子を自己形成することを解明した。
研究グループは,この研究成果について,混晶半導体の実力が最大限に引き出された高効率多機能発光素子の実現に寄与するものだとしている。