千葉大ら,色補正で遠隔診療の高品質化を実現

著者: sugi

千葉大学,金沢大学附属病院,DIC,画像技術研究所,センシング,アウトソーシングテクノロジーは共同で,カラーチャートを活用した顔動画の色補正に関する研究を行なうとともに,同時にスマートフォンで心拍数などのバイタル情報を非接触で取得できる高品質なシステムを実現した(ニュースリリース)。

自宅から診療を受けられる遠隔診療は,COVID-19患者の増加により,その必要性がますます加速している。遠隔診療では,これまでの血液・生化学検査などの検査結果を重視する診察から,画面を通して得られる顔や舌の色などの情報を活用した診察へのパラダイムシフトが求められている。

しかし,スマートフォンなどのビデオ通話では,デバイスの特性や患者の居場所の照明によって色の違いが起きてしまう。このことは,遠隔で視覚情報をもとに診察を行うにあたって大きな障壁だった。

研究グループは,遠隔診療での色再現用カラーチャートを作成した。これを患者と医師の双方に予め配布し,患者側が画面上に表示させたカラーチャートと,医師側の手元にあるカラーチャートの色を合わせるように画像の色を補正することで,より正確な色再現が実現する。これにより,端末や周辺の光環境の違いに影響されにくく安定的な条件で診察を行なうことができるという。

さらに研究では,これまでの機能的画像処理に関する研究成果を活用し,色再現を実現した患者の顔の動画から心拍数,呼吸数,ヘモグロビン量などのバイタル情報を取得することにも成功した。

これらの成果の融合により,スマートフォン上で高品質な遠隔診療への応用が期待できる高度な画像処理システムを実現した。遠隔診療を高度化するための技術が進歩することで,今後,未知の感染症が発生した際にも,対面診療が困難な患者に対して,遠隔であってもより対面に近い診療を提供できるようになるとする。

また,感染症対策のみならず,定期的なフォローが肝要な患者(悪性腫瘍や自己免疫疾患など)に対する高品質な遠隔診療へも応用できると考えられるという。

研究グループでは,産業用カメラでは実現できている顔動画からの酸素飽和度や血圧の推定手法を,スマートフォン上で実現することを目指している。将来的には,スマートフォンで顔以外の部位の動画を撮影することで,肩こりの定量化にも応用できることなどを期待できるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 徳島大ら,水銀フリープラズマ方式遠紫外線光源開発

    徳島大学と紫光技研は,水銀フリーで,生体への安全性と殺菌効果を両立したプラズマ方式遠紫外線(far-UVC)光源を開発し,その殺菌及びウイルス不活化効果を実証した(ニュースリリース)。 光波長200~230nmのfar- […]

    2025.06.25
  • NICTら,深紫外LEDで鉄道車両を省電力で空気殺菌

    情報通信研究機構(NICT)と旭化成は,発光波長265nm帯の高強度深紫外LEDを搭載した鉄道車両用空気殺菌モジュールを開発し,静岡鉄道の実運行中の鉄道車両内への搭載を実証した(ニュースリリース)。 深紫外線による殺菌応 […]

    2025.02.14
  • 東北大ら,ウイルスの感染力を蛍光で簡便・迅速評価

    東北大学と名古屋大学は,エンベロープウイルス粒子の脂質膜に結合し蛍光応答を示す分子プローブ(M2-NR)の開発に成功した(ニュースリリース)。 ウイルス解析には,一般には抗体法とPCR法があるが,いずれもウイルス粒子構造 […]

    2025.01.28
  • 岡山大,テラヘルツ顕微鏡でコロナのタンパク質検出

    岡山大学の研究グループは,テラヘルツ波ケミカル顕微鏡を用いた微量検体中の新型コロナウイルス内に存在するNタンパク質の高感度検出に成功した(ニュースリリース)。 新型コロナウイルスの拡大では,感染者を特定するためにPCR検 […]

    2025.01.07
  • 公大,光濃縮技術により正確なウイルス計測を可能に

    大阪公立大学の研究グループは,抗原抗体反応を検出原理とする検査手法であるイムノアッセイに,光濃縮技術を取り入れた光誘導イムノアッセイ技術を新たに開発した(ニュースリリース)。 新型コロナウイルスやノロウイルスなど,ウイル […]

    2024.06.28
  • 理研ら,波長228nmの遠紫外LEDで高効率動作を実現

    理化学研究所(理研),日本タングステン,埼玉大学は,人への安全性とウイルス不活化の効果がいずれも高い波長228nmのfar-UVC(遠紫外)LEDの高効率動作に成功した(ニュースリリース)。 波長が220~230nmのf […]

    2024.06.20
  • 豊田合成,最高級出力(200mW)UV-C LEDを開発

    豊田合成,最高級出力(200mW)UV-C LEDを開発

    豊田合成は,除菌用の水銀ランプの代替光源として期待されるUV-C(深紫外線)LEDにおいて,世界最高水準となる光出力200mWを実現した(ニュースリリース)。2024年4月より国内外でサンプル販売を始める。 UV-C L […]

    2024.04.22
  • 工学院ら,190~220nmで発光するUVランプを開発

    工学院大学とオーク製作所諏訪工場は,発光層に岩塩構造酸化マグネシウム亜鉛を適用することで,190nmから220nmの波長域で発光するUV-Cランプの構築に成功した(ニュースリリース)。 波長220nm以下の光源は,低圧水 […]

    2024.03.18
  • オプトキャリア