理研ら,力学と光学の新たなつながりを発見

理化学研究所(理研),高輝度光科学研究センターは,周期的外力が働く調和振動子として記述される古典的な力学系において,調和振動子の固有振動数がゆっくり変化する場合,外力の周波数に対する力学系の応答が光の回折と同じ振る舞いをすることを見いだした(ニュースリリース)。

研究グループは,次世代のリング型加速器である回折限界光源リングにおける安全な電子ビーム廃棄手法を検討する中で,真空チェンバーを破壊しないように,リングに蓄積された高密度電子ビームを微少な周期的キック(外力)により空間的に広げ,密度を低減する方法を検討した。

すると,シミュレーションと物理モデルで電子ビームの振る舞いを詳細に追跡する過程で,周期的外力を受けた廃棄電子ビームの挙動が,光の回折現象と同じ数学的形式で記述されることを発見した。

光学では,ある波長の光がスリットを通過すると,後段のスクリーン上に干渉縞を作る。この波の回折と干渉の現象が,電子ビームの場合の周期的なキックの強め合いに相当する。強制振動は力学系であり,外力の振動数と調和振動子の固有振動数が共鳴条件を満たせば,系の振幅は増大する。

一方,光学系の場合には,光の波の山と山の位相がそろえば強め合う。この両者が,強度に寄与する空間と時間にわたる物理量の位相のずれという概念のもと,光学でフレネル回折現象の記述に用いられる,共通の数学的道具であるフレネル積分を使って記述できることを見いだした。さらにこの対応関係から,光学における回折の程度を表すパラメータであるフレネル数を力学系でも定義できることも示した。

この研究により,力学の強制振動と光学の回折現象が同一の基礎方程式で記述できる場合があることが示された。この成果は,学術的には力学と光学の二分野の融合研究を推進するものと期待できるという。

また,実用的には,先端リング光源加速器に蓄積された高輝度電子ビームの廃棄システムの設計や粒子加速器における特殊なビーム操作の応答解析,共鳴状態に支配された力学系の応答解析への応用が期待できるとしている。

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