理研ら,レーザーで電子回折をアト秒での制御に成功

理化学研究所と独コンスタンツ大学は,アト秒(as)電子ビームを用いた実験により,電子回折過程を光によって超高速のアト秒で変調できることを発見した(ニュースリリース)。

2001年に発生が報告されたアト秒レーザー光は,物質中で電子が超高速で運動する様子を観測することを可能とした。しかし,アト秒レーザーの波長が原子1個のサイズよりも10倍から100倍も長いため,原子レベルの分解能で電子が動く様子を撮影することはいまだ達成されていない。

原子1個を識別して観測するには電子顕微鏡が使われる。電子顕微鏡で使われる電子ビームは,その波長が原子の大きさの100分の1程度であるため,原子レベルの観測が可能となる。結晶性の試料の場合,電子回折が物質の構造決定に頻繁に用いられる。

電子顕微鏡を用いて超高速のアト秒で起こる現象を観測するためには,アト秒電子ビームが必要となる。しかし,アト秒という極めて短い時間幅を有するビームで電子回折を行うと,どのような信号が観測されるかは,アト秒電子ビームを発生させることが難しい上,回折させる実験も困難なため,分かっていなかった。

研究グループは,2018年にアト秒電子ビームの直接観測に成功している。今回は,アト秒電子ビームを用いた電子回折実験を実施した。レーザー光によって電子ビームを加減速することで,アト秒電子ビームを発生させた。そして,アト秒電子ビームによって試料であるケイ素単結晶薄膜の透過電子回折像を取得した。

次に,このケイ素単結晶薄膜にレーザー光を照射すると,アト秒電子ビームとレーザー光の相対的な遅延時間(時間差)に応じて,回折強度が超高速で変化した。その変化は3,400asの周期で起こった。超高速で振動する電磁場であるレーザー光を利用することで,電子回折の効率をアト秒レベルで制御できることが分かった。

波長が約7倍長い高強度の中赤外レーザー光を結晶に照射した結果,周期が長い中赤外レーザー光によって電子の結晶への入射角度が大きく変調され,回折強度の変化がサイン波形ではなくなった。これはレーザー光の波長や強度を適切に選択することで結晶による電子ビームの回折強度を大きく変調できることを示している。

研究グループは,この結果をもとに,アト秒とオングストロームという極限的な時間空間分解能を持つ電子顕微鏡の開発を進めていくという。そのような顕微鏡が完成すれば,物質中で電子が動く様子が動画として撮影され,化学反応や光を当てると物質の性質が変化する光誘起相転移のミクロなスケールでの機構解明に役立つと期待されるとしている。

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